「○○預り金」多すぎ問題(簿記3級)

その他

簿記3級を学習してして迷うことの一つに、

似たような勘定科目が多すぎて、役割の違いが分からない

というものがあります。

中でも、「○○預り金」という勘定科目は、日商簿記3級の試験範囲だけでも結構な数が存在しますので、それぞれの違いを理解することが非常に重要です。

今回は、ぞれぞれの預り金について、役割の違いと意味合いを解説します。

日商簿記3級で出題される預り金

大前提として、「○○預り金」は全て負債となります。

よって、細かい性質の違いはあれど、根本的には、あとで払わないといけないお金ということには変わりません。

そして、『預り金』と名が付いているわけですから、一旦預かったお金という意味であることは間違いありません。

日商簿記3級で出題される、

【預り金】と名の付く勘定科目

は、

  • 従業員預り金
  • 所得税預り金
  • 住民税預り金
  • 社会保険料預り金
  • 預り金

です。

では、どんな場合に使われるのかを一つ一つ説明します。

従業員預り金

「従業員預り金」は、従業員の個人的なお金を一旦預かった場合に使用します。

具体例を見てください。

【問題1】
従業員の現金300円を会社の金庫に一旦預かった。

【問題2】
上記【問題1】で預かった300円を、従業員に現金で返金した。

以上のように使うのが「従業員預り金」です。

所得税預り金、住民税預り金、社会保険料預り金

  • 所得税預り金
  • 住民税預り金
  • 社会保険料預り金

この3つは同時に登場することが多いです。

「所得税預り金」は、従業員への給料から差し引いた所得税を意味する勘定科目です。

差し引いた所得税はあとで税務署へ納付しなければならないので、当然負債となります。

「住民税預り金」は、従業員への給料から差し引いた住民税を意味する勘定科目です。

差し引いた住民税はあとで市区町村へ納付しなければならないので、当然負債となります。

考え方は「所得税預り金」と全く同じと考えていいでしょう。

「社会保険料預り金」は、従業員への給料から差し引いた社会保険料を意味する勘定科目です。

差し引いた社会保険料はあとで年金事務所等へ納付しなければならないので、当然負債となります。

  • 所得税預り金
  • 住民税預り金
  • 社会保険料預り金

の3つは、実際の問題では次のように使われます。

【問題3】
従業員への給料の支給にあたり、給料総額800円から源泉所得税30円、源泉住民税60円、社会保険料50円を控除した残額を現金で支払った。

【問題4】
上記【問題3】の源泉所得税30円および源泉住民税60円、社会保険料50円に企業負担分50円を合わせて現金で納付した。

なお、「所得税預り金」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

所得税預り金の仕訳を分かりやすく解説(日商簿記3級)

預り金

最後に「預り金」ですが、これは、これまで説明した、

  • 従業員預り金
  • 所得税預り金
  • 住民税預り金
  • 社会保険料預り金

全ての勘定科目の代わりとして使うことができます。

ですが、簿記検定ではほとんどの場合勘定科目の指定があり、
その選択肢としても、

  • 従業員からの預り金なら「従業員預り金」
  • 所得税の預り金なら「所得税預り金」
  • 住民税の預り金なら「住民税預り金」
  • 社会保険料の預り金なら「社会保険料預り金」

が指定されていると思いますので、現実として、「預り金」という勘定科目を使う場面はあまり無いかと思います。

仮に勘定科目の指定が無ければ、

  • 従業員預り金
  • 所得税預り金
  • 住民税預り金
  • 社会保険料預り金

の全てについて、「預り金」で代用可能ですが、その手の問題において『勘定科目の指定が無い』ということは、

恐らくあり得ない

と思います。

なぜなら、別解が存在すると採点がめんどくさいからです。

「従業員預り金」と「預り金」のどちらも正解

や、

「所得税預り金」と「預り金」のどちらも正解

という状況は、採点者にとって負担になります。

よって、本試験においてはほぼ間違いなく勘定科目の指定がありますので、選択肢の中から選んで解答すればOKです。

仮に選択肢の中に「預り金」しか無ければ、そのときは当然「預り金」を使って仕訳をします。
(そんな問題が出る可能性は低いでしょうけどね)

それぞれの預り金の覚え方

ご覧の通り、「○○預り金」という勘定科目は、簿記3級だけでも結構な数が存在します。

ただ、最初にも言ったように、どんな預り金だろうと、

一旦預かっているお金

ということには変わりないので、皆例外なく、

負債

です。

覚え方としては、相手先や内容で区別すると分かりやすいかと思います。

従業員預り金

「従業員預り金」は『従業員』と付くことから分かる通り、

従業員に対しての負債です。

所得税預り金

「所得税預り金」は『所得税』と付くことから分かる通り、
あとで納付すべき所得税です。

会社の所得税ではなく、従業員の所得税ですからね。

ちなみに納付先は税務署です。

まぁ、納付先がどこなのかということまで簿記検定で問われることはないでしょうから、参考程度に捉えていただいて結構です。

住民税預り金

「住民税預り金」は『住民税』と付くことから分かる通り、
あとで納付すべき住民税です。

会社の住民税ではなく、従業員の住民税ですからね。

ちなみに納付先は市区町村です。

これに関しても、納付先がどこなのかということまで簿記検定で問われることはないでしょうから、参考程度に捉えていただいて結構です。

社会保険料預り金

「社会保険料預り金」は『社会保険料』と付くことから分かる通り、
あとで納付すべき社会保険料です。

これに関しても、あくまでも従業員の社会保険料ですからね。

ちなみに納付先は年金事務所等です。

これまた、納付先がどこなのかということまで簿記検定で問われることはないでしょうから、参考程度に捉えていただいて結構です。


ということで、今回はそれぞれの預り金について解説しました。

似たような勘定科目が多くて頭の中がごちゃごちゃになりやすい内容なので、1回、2回の学習でマスターできる人はほとんどいません。

何度も仕訳練習を行うことによって、不思議なほど頭の中が整理されていきます。

今回の記事を学習に役立てていただけたら幸いです。

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