商品有高帳の先入先出法と移動平均法について(簿記3級)

期中処理

日商簿記3級の試験範囲に『商品有高帳』があります。

商品有高帳とは商品を管理するための帳簿で、商品の増減をその都度記録します。

当然ですが、商品というのは仕入れれば増えますし、売れば減ります。

このような商品の増減を逐一記録するのが商品有高帳です。

商品有高帳の記入方法(計算方法)には、日商簿記3級では先入先出法移動平均法の2つの方法があります。

先入先出法移動平均法というのは、商品を販売したときの売上原価(売れた分)の計算方法です。

この記事ではそれらの考え方や意味合いについてをメインで説明します。

商品有高帳の記入方法を詳しく学習したい方は次の動画を見てください。

以下は僕のYouTube動画のリンクです。

先入先出法の解説動画

移動平均法の解説動画

では、この記事では考え方や意味合いについてを中心にお話しします。

先入先出法

それでは、まずは先入先出法からお話しします。

先入先出法の計算方法

先入先出法は、古い商品から順番に売れたという仮定で計算する方法です。

具体的に金額を使って説明します。

次の例を見てください。

【例1】
4/6の売上原価を先入先出法で計算しなさい。

4/1 月初商品(前月繰越)
20個 @300円

4/3 仕入
40個 @315円

4/6 売上
30個

このような場合において、4/6の売上30個については、古い物から順番に売れたものとして売上原価(売れた分)を計算します。

つまり、

  • まずは月初商品(前月繰越)の20個が全て売れ
  • そのあとに、4/3に仕入れた商品のうち10個が売れた

と仮定して売上原価を計算します。
(20個+10個=30個)

そうすると、4/6の売上原価は9,150円となります。

※20個×@300=6,000
 10個×@315=3,150
 6,000+3,150=9,150

これが先入先出法です。

先入先出法が適しているのはどんな会社(業種)?

基本的に世の中の多くの会社は先入先出法を採用します。

特に分かりやすいのは食品や医療品を販売している会社ですね。

食品や医療品は賞味期限や使用期限があるので、実際の販売においても、できるだけ古い物から順に売っていきます。

例えば、コンビニやスーパーの品出し作業では、古い商品(賞味期限が早く切れる商品)を棚の手前に陳列し、新しい商品を棚の奥に入れます。

こうすることにより、なるべく古い商品から順番に売れていくようにしています。

賞味期限の無い衣類や雑貨などにしたって、古い物から順番に売れるに越したことはないわけですから、基本的には古い商品が先に売れるように陳列するのがベストです。

ただし完全一致は現実的に不可能

このように、実際に古い物から順番に販売していく業種の会社であれば、簿記の計算もそれに合わせて先入先出法を採用するのが望ましいと言えます。

しかし、とは言っても『実際の物の流れ』と『簿記の記録』を完全に一致させることは現実的には不可能です。

簿記上(商品有高帳)において先入先出法を採用すれば、簿記の計算上は【古い物から順番に売る】を完璧に再現できますが、実際の現場では【古い物から順番に売る】を100%実行することはまぁ無理でしょう。

なぜなら、古い商品を手前側に陳列していたとしても、賞味期限の長い商品を買いたいがために奥に手を突っ込んで取る客もいますし、そうでなくても、たまたま新しい商品が先に売れてしまうことだってあるでしょうから。

ですから、実際の商品の売れ方を100%簿記に一致させることはできません

ただまぁ、完全一致は無理でも、できる限り一致させたほうが良いのは確かですから、多くの企業では先入先出法を採用しているということです。

移動平均法

次に移動平均法について説明します。

移動平均法の計算方法

移動平均法は、古い商品と新しい商品の平均単価で売上原価を計算する方法です。

具体的に金額を使って説明します。

次の例を見てください。

【例2】
4/6の売上原価を移動平均法で計算しなさい。

4/1 月初商品(前月繰越)
20個 @300円

4/3 仕入
40個 @315円

4/6 売上
30個

このような場合において、4/6の売上30個については、古い商品と新しい商品の平均単価で売上原価(売れた分)を計算します。

つまり、

  • 月初商品(前月繰越)の20個
  • 4/3に仕入れた40個

の平均単価で計算します。

ご覧の通り平均単価は@310円となりますので、この単価を使って4/6の売上原価を計算するわけです。

そうすると4/6の売上原価は9,300円となります。

※@310×30個=9,300

これが移動平均法です。

移動平均法が適しているのはどんな会社(業種)?

移動平均法が適している会社としては、古い商品と新しい商品が混ざってしまうような業種です。

たとえばガソリンや灯油などを販売している会社ですね。

ガソリンや灯油などは液体ですから、古い物と新しい物がタンク内で混ざってしまいます。

よって、平均単価を算出して売上原価を計算する移動平均法が最も現実にマッチしていると言えます。

先入先出法と移動平均法で売上原価は変わる

ここまでの説明からお気づきかもしれませんが、先入先出法を採用するか移動平均法を採用するかで売上原価の金額に違いが出ます

売上原価に違いが出るということは、当然ですが売上総利益(粗利益)にも違いが出るということになります。

※売上高-売上原価=売上総利益

これに関してたまに聞かれることとして、

「先入先出法を選ぶか移動平均法を選ぶかで結果に差が出て良いんですか?」

というものがあります。

この答えは、

「はい良いんです」

となります。

先入先出法も移動平均法も会計的に認められた正しい方法ですから、何の問題もありません。

一つの事実から複数の結果で出てしまうのは不自然に感じるかもしれませんが、そもそも先入先出法や移動平均法というのはあくまでも仮定計算です。

商品がそういう売れ方をしたと仮定して売上原価を計算しているに過ぎません。

先ほども言ったように、大量の商品を販売しているコンビニやスーパーなどにおいては、『簿記上の商品の流れ(計算結果)』と『現実の商品の流れ』を100%一致させることは、そもそも現実的に不可能ですからね。

番外編(個別法)

なお、もしも『簿記上の商品の流れ(計算結果)』と『現実の商品の流れ』を100%一致させたいのであれば、商品を一個一個管理するしかありません。

例えば、ペットボトルのお茶という商品の在庫が1,000本あるとします。
(この1,000本は全て同じ物です。)

それら全てを、

  • このお茶は1本60円で仕入れた物
  • このお茶は1本58円で仕入れた物
  • このお茶は1本61円で仕入れた物

というように1本1本把握しておき、売れた際には、1,000本のうちのどれが売れたのかを分かるようにしておくのです。

この方法を個別法といいます。

個別法であれば、『簿記上の商品の流れ(計算結果)』と『現実の商品の流れ』を100%一致させることができます。

ですが、コンビニやスーパーなどで個別法を採用すると大変なことになります。

なぜならコンビニやスーパーは商品が大量にあるからです。

数千個や数万個、あるいはそれ以上の数の商品が存在するため、それらを一つ一つ管理しようとすると、時間がいくらあっても足りません。

したがって、コンビニやスーパーなどで個別法を採用するのは現実的には不可能と言えるでしょう。

じゃあどんな店が個別法を採用するのかというと、宝石店や骨董品店などです。

このような店は品数がそれほど多くなく、かつ、一個一個の商品の価格が桁違いに高いですから、個別法が向いています。

むしろ先入先出法なんかで大雑把にやってしまうと、一つ一つの商品の値段が高いだけに、現実の物の流れと帳簿の計算結果の誤差も大きくなります。

それに、そもそも宝石や骨董品を扱ってる店の場合、同じ商品が複数存在しない場合も多いでしょうから、先入先出法や移動平均法を採用できないこともあるでしょう。

なお、個別法は日商簿記3級には出題されませんので、無理して覚える必要はありません。

まとめ(先入先出法、移動平均法、個別法)

では最後に、今回解説した3つの方法をまとめます。

先入先出法

先入先出法とは、古い商品から順番に売れたと仮定して計算する方法であり、多くの企業で採用されています。

特に食品や医療品など賞味期限や使用期限のあるものは先入先出法を採用するのが望ましいでしょう。

移動平均法

移動平均法とは、古い商品と新しい商品の平均単価を算出し、その平均単価で売上原価を計算する方法です。

この方法がマッチする業種はそれほど多くありませんが、ガソリンなどの燃料を販売している会社がピッタリだと思います。

個別法

個別法は、商品を一つ一つ厳密に管理し、売れるたびに一つ一つ売上原価を計算する方法です。

この方法は、現実の商品の流れと簿記上の商品の流れが完全に一致する唯一の方法ですが、同時に最も手間のかかる方法でもあります。

参考までに紹介しましたが、個別法は日商簿記3級の範囲外なので無理に押さえる必要はありません。


ということで今回は主に商品有高帳の先入先出法と移動平均法について解説しました。

参考になれば幸いです。

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