この記事では、「貸付金」「借入金」の仕訳について初心者にも分かりやすく解説しますが、特に詳しく解説するのは、先に利息を差し引く場合の仕訳の流れになります。
まず前提として、
- 貸付金(資産) ⇒ 後でお金を返してもらえる権利
- 借入金(負債) ⇒ 後でお金を返さなければならない義務
です。
それを踏まえた上で、この先の説明を読んでください。
貸付金に関する一連の仕訳
まずは貸付金から見ていきます。
- 通常の場合
- 先に利息を差し引く場合
の両方を説明しますが、通常の場合のほうが簡単なので、そちらから先に見ていきます。
通常の貸付金の仕訳
ではまずは、通常の貸付金の流れを見ていきます。
流れを簡単に説明すると、
- まずは普通にお金を貸す
- その後、お金を返してもらうときに、利息も一緒にもらう
という流れになります。
ではさっそく問題をやっていきましょう。
【例題1】
800円を貸し付け、全額を普通預金から支払った。なお、貸付期間は3ヵ月、利率は年5%である
答えを表示します。
800円を貸し、普通預金から払っただけなので、これは特に問題無いかと思います。
では次に、返済時の問題を見ていきます。
【例題2】
上記【例題1】の貸付金の返済期日となり、利息とともに普通預金に振り込まれた。
まずは答えを表示します。
800円の貸付金が無くなるだけでなく、10円を受取利息(収益)として計上します。
そしてその合計額の810円が普通預金です。
利息の計算をする手間はありますが、計算自体は難しくありません。
利息の計算は次のようになります。
3ヵ月の月割り計算を忘れないように注意してください。
ということで、以上が通常の貸付金の流れです。
先に利息を差し引く場合の貸付金の仕訳
では、ようやく本題に入ります。
先に利息を差し引く場合の貸付金の仕訳の流れを具体例を使って見ていきます。
先に利息を差し引くとは、お金を貸すときに、あらかじめ利息をマイナスし、マイナスしたあとの金額だけを相手に渡すということです。
次の問題を見てください。
【例題3】
800円を貸し付け、利息を差し引いた残額を普通預金から支払った。 なお、貸付期間は3ヵ月、利率は年5%である。
まずは答えを表示します。
解答の仕訳の意味が分かるでしょうか?
貸付金、つまり、あとでお金を返してもらえる権利は800円計上されたにもかかわらず、
相手には790円しか渡さずに済んでいます。
言い方を変えれば、「790円しか渡さないけど、3ヵ月後に800円で返してもらうからね」ということです。
間違えないでほしいのは、貸付金はあくまでも800円だということです。
ただ、貸すとき(今)は790円しか相手に渡さない。
なぜかというと、利息を差し引いているから。
先に利息を差し引くということは、利息分を先に貰っているということですので、次の仕訳のように考えることもできます。
まず800円全額を相手に渡してから、即行で利息分10円を貰ったと考えることができます。
この仕訳は「普通預金」を相殺することができ、そうすると解答の仕訳と同じになります。
なので、一発で解答を出すのがどうしても難しい場合は、上記のように2行仕訳を書いてから、「普通預金」の部分を相殺すれば答えを出すことができます。
改めて注意点を言いますが、先に利息を差し引くといっても、貸付金の額はあくまでも800円のままということを強く認識してください。
では最後に、返済時の問題を見ていきます。
こちらは簡単です。
【例題4】
上記【例題3】の貸付金の返済期日となり、普通預金に振り込まれた。
答えを表示します。
返済時は利息の処理はありません。
なぜなら、利息の処理は、貸すときに既にやっているからです。
なので、先に利息を差し引く場合に関しては、返済時の処理は簡単だと覚えておくといいと思います。
借入金に関する一連の仕訳
次に借入金を見ていきます。
先ほど説明した貸付金と逆の立場で考えればいいだけなので、考え方というか、感覚自体は貸付金のときと同じです。
まずは通常の借入金の仕訳
ではまずは、通常の借入金の流れを見ていきます。
流れを簡単に説明すると、
- まずは普通にお金を借りる
- その後、お金を返すときに、利息も一緒に払う
という流れになります。
ではさっそく問題をやっていきましょう。
【例題5】
500円を借り入れ、全額が普通預金口座に振り込まれた。なお、借入期間は9ヵ月、利率は年4%である。
答えを表示します。
500円を借り、普通預金で貰っただけなので、これは特に問題無いかと思います。
では次に、返済時の問題を見ていきます。
【例題6】
上記【例題5】の借入金の返済期日となり、利息とともに普通預金から支払った。
まずは答えを表示します。
500円の借入金が無くなるだけでなく、15円を支払利息(費用)として計上します。
そしてその合計額の515円が普通預金です。
利息の計算をする手間はありますが、計算自体は難しくありません。
利息の計算は次のようになります。
9ヵ月の月割り計算を忘れないように注意してください。
ということで、以上が通常の借入金の流れです。
先に利息が差し引かれる場合の借入金の仕訳
では、ようやく本題に入ります。
先に利息が差し引かれる場合の借入金の仕訳を具体例を使って見ていきます。
先に利息が差し引かれるとは、お金を借りるときに、あらかじめ利息がマイナスされ、マイナスされたあとの金額だけを受け取るということです。
次の問題を見てください。
【例題7】
500円を借り入れ、利息を差し引かれた手取額が普通預金口座に振り込まれた。なお、借入期間は9ヵ月、利率は年4%である。
まずは答えを表示します。
解答の仕訳の意味が分かるでしょうか?
借入金、つまり、あとでお金を返さなければならない義務は500円計上されたにもかかわらず、
485円しか貰えませんでした。
言い方を変えれば、「485円しか貰えなかったけど、9ヵ月後に500円で返さなければならない」ということです。
間違えないでほしいのは、借入金はあくまでも500円だということです。
ただ、借りるとき(今)は485円しか貰えない。
なぜかというと、利息が差し引かれているから。
先に利息が差し引かれるということは、利息分を先に払っているということですので、次の仕訳のように考えることもできます。
まず500円全額を受け取ってから、即行で利息分15円を払ったと考えることができます。
この仕訳は「普通預金」を相殺することができ、そうすると解答の仕訳と同じになります。
なので、一発で解答を出すのがどうしても難しい場合は、上記のように2行仕訳を書いてから、「普通預金」の部分を相殺すれば答えを出すことができます。
改めて注意点を言いますが、先に利息が差し引かれるといっても、借入金の額はあくまでも500円のままということを強く認識してください。
では最後に、返済時の問題を見ていきます。
こちらは簡単です。
【例題8】
上記【例題7】の借入金の返済期日となり、普通預金から支払った。
答えを表示します。
返済時は利息の処理はありません。
なぜなら、利息の処理は、借りるときに既にやっているからです。
なので、先に利息が差し引かれる場合に関しては、返済時の処理は簡単だと覚えておくといいと思います。
ということで、今回は「貸付金」と「借入金」の仕訳について説明しました。
貸付金・借入金ともに、先に利息を差し引く場合の処理が少し難しいと感じるかもしれませんが、このような考え方をする場面が簿記ではこの先何度も出てきます。
なので、今回の仕訳をマスターしておけば、次に同じようなパターンの仕訳に出会ったときに、『あ、またこのパターンか』という具合に軽く受け止めることができます。
重要なのは、仕訳の丸暗記ではなく感覚を身に付けることですからね。
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