修繕と改良とは(判定基準と仕訳を徹底解説)

期中処理

今回は修繕改良について解説します。

修繕改良は、「建物」「備品」「車両」などの資産について行うことですが、簿記の問題で出てくるのは、ほとんどが「建物」についてです。

例えば、「建物」について工事や修理などの施しをした場合は、その行為が修繕改良のどちらなのかを判定しなければなりません。

なぜなら、修繕改良のどちらなのかによって、会計処理(仕訳)が変わるからです。

この記事では、

  1. 修繕と改良の違い
  2. 修繕・改良の具体的な判定仕方
  3. 修繕・改良それぞれの仕訳

について解説していきます。

修繕と改良の違い

修繕とは

修繕とは、資産の原状を回復(現状を維持)することをいいます。

建物などの資産を継続して使っていくためには、修理や保守などを必要とすることがあります。

その作業を修繕といい、修繕をした場合は、修繕費という費用が発生します。

イメージしやすいように具体例を挙げると、

  • 建物の窓ガラスが割れたから取り換える
  • 壁紙が剥がれたから新しくする
  • 床が傷ついたから直す
  • 汚れたからキレイにする

などです。

その状態を維持(キープ)するための作業修繕というわけです。

修繕という言葉は日常会話ではあまり聞くことは多くないかもしれませんので、近い言葉を挙げると、修理という言葉が意味としては近いと思います。

なお、修繕に該当する場合の支出を収益的支出といいます。

改良とは

一方で、改良とは、資産の価値を高めたり、寿命が延びたりする施しのことをいいます。

先ほど説明した修繕は、あくまでも資産の状態を維持(キープ)することでした。

ですが改良は、維持やキープではなく、明らかに元の状態よりも良くするための作業なのです。

具体的には、

  • 建物の増築や改築
  • 建物の屋根を補強する
  • 建物に階段を取り付ける

などです。

こういった作業については、その資産の価値が上がったり、寿命が延びたりすると簿記では考えます。

このように、その施しによって資産が元の状態よりも良くなった場合は、その作業は改良と判定されます。

なお、改良に該当する場合の支出を資本的支出といいます。

修繕・改良の具体的な判定の仕方

次に、修繕改良について、それぞれどのように判定するのかを解説します。

どんな場合に修繕と判定するか

まずは修繕の判定方法を説明します。

以下のような文言や表現があった場合は修繕と判断してください。

問題によって微妙に言い回しが違う場合がありますので、一字一句覚えるというよりは、「何となくこんな感じのことが書いてあったら修繕と判断すればいいんだな」くらいで押さえておけばいいです。

  • 収益的支出(この用語は覚えたほうがいいです)
  • 原状回復
  • 現状維持
  • 修理・保守

のような表現をされたらまず間違いなく修繕となります。

他には、先ほども書きましたが、

  • 窓ガラスが割れたから取り換えた
  • 壊れた箇所があったから直した

のような、その資産の価値をキープするための行為であれば、修繕と考えます。

なので、キーワードで覚えるのもいいのですが、何となくの意味合いで押さえたほうが様々な問題に対応しやすいと思います。

どんな場合に改良と判定するか

次に改良の判定方法を説明します。

以下のような文言や表現があった場合は改良と判断してください。

問題によって微妙に言い回しが違う場合がありますので、一字一句覚えるというよりは、「何となくこんな感じのことが書いてあったら改良と判断すればいいんだな」くらいで押さえておけばいいです。

  • 資本的支出(この用語は覚えたほうがいいです)
  • 資産の価値を高める
  • 耐用年数を延長する・寿命を延ばす
  • 増築・改築

のような表現をされたらまず間違いなく改良となります。

他には、先ほど書いたことと重複しますが、

  • 建物の屋根を補強した
  • 建物の耐震工事をした
  • 新たに階段を取り付けた
  • 建物を防火や防音にした

のような、明らかにその資産の価値が上がった行為であれば、改良と考えます。

なので、こちらも修繕同様、キーワードで覚えるよりも、何となくの意味合いで押さえたほうが様々な問題に対応しやすいかもしれません。

修繕は、あくまでも現状維持やキープというニュアンスであるのに対し、改良は、元の状態よりも良くするというイメージになります。

まぁ、だから改良って呼ぶわけなんでね。

修繕・改良それぞれの仕訳

では、いよいよ実際の仕訳のやり方について説明します。

修繕の仕訳

支出額を「修繕費」に計上する

修繕に該当する場合は、その支出額を「修繕費」(費用)で仕訳します。

具体例

【例題】
建物の破損部分について修理を行い、100円を小切手を振り出して支払った。

解答は次の通りです。

(修繕費)100  (当座預金)100

問題文に【修理】という言葉があるので、この100円の支出は修繕と判断します。

よって、借方は「修繕費」(費用)となります。

やはりイメージとしては、資産の状態を維持するというような意味合いであれば、修繕に該当すると判断していいでしょう。

今回の問題は『破損部分について修理』ということなので、単に『壊れたから直した』というだけであり、別に元の状態よりも良くしたわけではなく、資産を維持するためにやったことですから、修繕ということになります。

まぁ、そのように考えるのが面倒だと感じるのであれば、先ほども書いた通り、【修理】という言葉が問題文の中に書いてある時点で修繕だと判断してもいいです。

ただ、しつこいようですが、どちらかと言えば単にキーワードで暗記するよりも、意味合いで理解しておいたほうが、ひねった問題にも対応しやすいとは思います。

改良の仕訳

支出額を資産に計上する

改良に該当する場合は、その支出額をその資産で仕訳します(その資産自体を増加させます)。

つまり、たとえば建物に対する改良なら「建物」の借方に計上し、車両に対する改良なら「車両」の借方に計上するということです。

具体例

【例題】
建物の増築を行い、代金200円は月末に支払うこととした。

解答は次の通りです。

(建物)200  (未払金)200

問題文に【増築】という言葉があるので、この200円の支出は改良と判断します。

よって、その資産自体を増加させる必要があるので、借方は「建物」となります。

やはりイメージとしては、資産の価値を高めたり、資産の寿命を延ばしたりするような意味合いであれば、改良に該当すると判断していいでしょう。

今回の問題は『増築』ということで、明らかに建物の価値が上がっていますから、改良ということになります。

修繕と違い、元の状態よりも良い状態になったというニュアンスになります。

まぁ、そのように考えるのが面倒だと感じるのであれば、【増築】という言葉が問題文の中に書いてある時点で改良だと判断してもいいです。

ただ、これまたしつこいようですが、単にキーワードで暗記するよりも、意味合いで理解しておいたほうが、ひねった問題にも対応しやすいとは思います。

仕訳の練習問題

では、最後に仕訳の練習問題を行います。

【題1】
建物の修繕と改良を行い、その代金500円を小切手を振り出して支払った。なお、支払額のうち100円は収益的支出であり、残額は資本的支出である。

まずは解答を表示します。

修繕改良の両方を同時に行ったという問題です。

  • 収益的支出 ⇒ 修繕
  • 資本的支出 ⇒ 改良

ということになりますので、

  • 修繕費 100円
  • 建物 400円 (500円-100円)

となります。

【題2】
建物の修繕と改良を行い、代金600円を普通預金から支払った。なお、そのうち120円は原状回復のための支出であり、残額は建物の価値を高めるための支出である。

まずは解答を表示します。

この問題も、修繕改良の両方を同時に行ったという問題です。

  • 原状回復 ⇒ 修繕
  • 価値を高める ⇒ 改良

ということになりますので、

  • 修繕費 120円
  • 建物 480円 (600円-120円)

となります。

修繕となるのは、資産の価値を維持(キープ)する、今の状態を保つというニュアンスの支出です。

【原状回復】という言葉は、元の状態に戻すという意味合いですから、これは修繕に該当します。

一方で、改良となるのは、元の状態よりも良くなるような施しです。

よって、「建物の価値を高める」という支出は改良に該当します。


ということで、最後にやった2つの問題は解けたでしょうか?

まだ自信が無い場合は、繰り返し読んで必ずマスターしてください。

修繕改良は、本試験で出題される可能性が極めて高い論点ですからね。

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