「所得税預り金」は、従業員に給料を支払うときなどに発生する負債の勘定科目なのですが、簿記3級を勉強している人の中には、これに苦手意識を持つ人が非常に多い印象があります。
「所得税預り金」が発生するのは従業員に給料を支払った時で、消滅するのは従業員の所得税を納付したときです。
よって「所得税預り金」は、
- 発生時(給料支払い時)
- 消滅時(所得税納付時)
の2つのタイミングで登場するわけですが、特に難しいのは発生時(給料支払い時)の処理です。
この仕訳の感覚を掴むのはなかなか難しいかもしれません。
ですが、しっかりと意味を考えれば必ず理解できる内容ですし、仕訳の形もほぼ決まっていますから、一度分かってしまえば大したことはありません。
具体的な問題をやりながら、初心者にも分かりやすく順を追って説明します。
所得税預り金が発生するときの仕訳
ではまずは、所得税預り金が発生するときの取引を見ていきます。
従業員に給料を支払うときの仕訳です。
【問題1】
給料500円から源泉所得税20円を差し引いた残額を現金で支払った。
まずは解答を表示します。
給料の500円から源泉所得税の20円を差し引いた480円を従業員へ支払っています。
ちなみに源泉所得税とは、ざっくり言うと給料から差し引く所得税のことです。
まず強く認識すべきなのは、給料の額はあくまでも500円だということです。
なので、給料(費用)として計上するのは500円です。これを480円にしてしまうミスが多いので注意してください。
で、給料の額は500円ですが、実際に払ったのは480円です。
差し引かれた20円は従業員の所得税であり、その20円を会社が一旦預かるという形を取ります。
その預かった20円は「所得税預り金」という負債として計上します。
なぜ負債なのかというと、後日税務署へ納付しなければならないからです。
念のため強調しておきますが、この所得税20円は、あくまでも従業員個人の税金です。
会社の税金ではありません。
従業員の立場からすると、月給500円なのに480円しか貰えなかったことになりますが、損をしたわけではありません。
なぜなら、20円の所得税を納める手間を会社にやってもらっただけだからです。
500円を全額貰って、あとから20円を自分で納める
というのは手間なので、だったら最初から480円だけ貰うという制度になっています。
(これを源泉徴収制度といいます)
この480円がいわゆる【手取額】です。
会社の立場からすると、月給500円の従業員に480円しか払っていないことになりますが、差額の20円もいずれ税務署に納付しなければならないため、別に得をしたわけではないですからね。
所得税預り金が消滅するときの仕訳(納付時)
では次に、預かった所得税を納付するときの仕訳を見ていきます。
先ほどやった【問題1】の続きですが、こちらは非常に簡単です。
【問題2】
所得税預り金で処理していた源泉所得税20円を税務署に現金で納付した。
それでは解答を表示します。
この仕訳に関しては特に解説は不要でしょう。
解答の通り、所得税預り金(負債)を借方に計上するとともに、現金を貸方に計上するだけです。
2つの仕訳を合算・相殺してみると
最後に、今やった【問題1】と【問題2】の仕訳を相殺してみます。
ということで、結局は、
という仕訳を1回行ったのと同じ結果になります。
「所得税預り金」という勘定科目が一旦あいだに挟まるから複雑に感じるだけで、結果だけを見ると非常にシンプルなのです。
今回の所得税預り金の論点に限らず、簿記の仕訳というのは、一見複雑な仕訳をごちゃごちゃとやっているように見えても、一連の仕訳を並べて合算・相殺してみると、実はそんなに大したことはやっていないことが多いです。
簿記を勉強していく中で、理解の難しい仕訳に遭遇することは何度もあると思いますが、仕訳の意味合いがイマイチしっくりこないときは、連続した取引を一つのまとまりとして捉えてみてください。
仕訳への見え方は確実に変わってきます。
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