日商簿記3級で「仮払金」が使われるケースは、主に、
- 出張旅費に関する仕訳
- ICカードに関する仕訳
の二つです。
この記事では、
2.ICカードに関する仕訳
について説明します。
1.出張旅費に関する仕訳
についてはこちらの記事で解説しているので参考にしてください。
では、ICカードの仕訳について解説していきます。
ICカードというのは、主に電車やバスなどに乗るときに使用するSuicaやPASMOのことで、これらを使うためには、まずはICカードへの入金(チャージ)が必要です。
そして、入金をしたら利用ができるようになります。
つまり、
入金 → 利用
という2ステップで使用するのがICカードの使い方です。
ですが簿記の仕訳としては、
- 入金時の仕訳
- 利用時の仕訳
- 決算時の仕訳
の3つの仕訳を考える必要があります。
そして、さらにややこしいことに、
- 入金時に「仮払金」とする方法
- 入金時に「旅費交通費」とする方法
の2つの方法が存在します。
よって、ICカードがらみの仕訳は全部で6パターンです。
(と言っても、仕訳をしなくていいポイントもある)
ですが、しっかりと意味を考えていけばそんなに難しくありません。
『なぜこの仕訳をするのか?』を理解できるように解説していきますので、仕訳の丸暗記ではなく、意味合いを理解することを心がけて読んでください。
なお、
- 入金時に「仮払金」とする方法
- 入金時に「旅費交通費」とする方法
のどちらで仕訳をするのかは、問題に指示がありますので、その指示に従ってもらえれば大丈夫です。
入金時に「仮払金」とする場合の仕訳
まずは、入金時に「仮払金」とする方法について見ていきます。
入金時(チャージした時)の仕訳
ICカードに入金(チャージ)したときは、「仮払金(資産)」に計上します。
次の具体例を見てください。
【問題1】
交通費等の支払いに利用するICカードに現金500円をチャージした。入金時に仮払金とする方法で処理すること。
では、まずは解答を表示します。
問題の指示通り、借方を「仮払金(資産)」にしてください。
この処理方法の意味合いとしては、まだ使ってないから資産という解釈です。
今の時点では、ICカードにチャージしただけですから、手持ちの現金500円が減った代わりにICカードの残高が500円増えたわけです。
そのICカードの価値を「仮払金(資産)」で表しているということです。
ICカード利用時(支払時)の仕訳
次に、ICカード利用時の仕訳を見ていきます。
仕訳は非常に単純で、使った金額を、「仮払金」から「旅費交通費」などの費用に振り替えるだけです。
次の具体例を見てください。
【問題2】
電車代400円を問題1のICカードから支払った。
まずは解答を表示します。
電車代400円を「旅費交通費」として計上するとともに、貸方を「仮払金」とし減額します。
「仮払金」はICカードの残高を表していますので、使った分だけ減らすという考え方です。
決算時の仕訳
最後に決算の仕訳ですが、今回の、入金時に「仮払金」とする方法の場合、決算時の仕訳はありません。
【問題3】
決算を迎えた。ICカードの残高が100円ある。
解答は次の通りです。
決算時にやりたいことは、
- ICカードで支払った費用を正しい金額で計上する
- 仮払金を正しい残高にする
の二つです。
まず、
1.ICカードで支払った費用を正しい金額で計上する
に関しては、既に正しい金額になっています。
ICカードから支払ったのは「旅費交通費」の400円ですが、それについては問題2において既に計上されていますので、特に仕訳は必要ありません。
参考までに、「旅費交通費」のT勘定を以下に表示しておきます。
次に、
2.仮払金を正しい残高にする
に関しても、既に正しい残高になっています。
・【問題1】で借方に「仮払金」500円
・【問題2】で、貸方に「仮払金」400円
を計上していますので、「仮払金」のT勘定は次のようになっています。
「仮払金」の残高は100円ということで、既に正しい金額になっていますから、特に仕訳は必要ありません。
以上のことから、入金時に「仮払金」とする方法の場合、決算時の仕訳は必要ありません。
入金時に「旅費交通費」とする場合の仕訳
次は、入金時に「旅費交通費」とする方法について見ていきます。
入金時(チャージした時)の仕訳
ICカードに入金(チャージ)したときは、「旅費交通費(費用)」に計上します。
次の具体例を見てください。
【問題4】
交通費等の支払いに利用するICカードに現金500円をチャージした。入金時に旅費交通費とする方法で処理すること。
では、まずは解答を表示します。
問題の指示通り、借方を「旅費交通費(費用)」にしてください。
この処理方法の意味合いとしては、
ICカードにチャージしたということは、近い将来どうせ使うわけなので、それならいっそのこと、ここで全額費用にしてしまおう
といった感じです。
つまり、ICカードに500円入っているという事実は無視します。
あたかも今全額を消費したかのような仕訳をしているとも言えますね。
ただこの方法だと、ICカードを「旅費交通費」以外で使用した場合、訂正しなければならなくなります。
例えば、ICカードで事務用品を購入した場合、正しい費用は「消耗品費」なので、
「旅費交通費」から「消耗品費」に振り替える仕訳が必要になります。
ですから、今回の入金時に「旅費交通費」とする方法は、ICカードは電車やバスなどの交通費でしか使わない場合でないと、なかなか採用しづらい処理方法だとは思います。
まぁ、問題を解く上ではそこまで考える必要はありませんけどね。
ICカード利用時(支払時)の仕訳
次に、ICカード利用時ですが、結論、仕訳はありません。
なぜなら、ICカードへの入金の時点で、既に全額を「旅費交通費」にしているからです。
必要無いかもしれませんが、一応具体例を表示します。
【問題5】
電車代400円を問題4のICカードから支払った。
ご覧の通り、【仕訳なし】が解答になります。
決算時の仕訳
最後に決算時の仕訳について説明します。
決算時において、ICカードの残高が残っている場合は、その金額を「旅費交通費」から「仮払金」に振り替えます。
まぁ、言葉で説明されるより実際の問題を見たほうが確実に分かりやすいでしょう。
【問題6】
決算を迎えた。ICカードの残高が100円ある。
まずは解答を表示します。
【問題3】のときと同じ話になりますが、決算時にやりたいことは、
- ICカードで支払った費用を正しい金額で計上する
- 仮払金を正しい残高にする
の二つです。
まず、
1.ICカードで支払った費用を正しい金額で計上する
に関しては、決算の仕訳をやる前の時点では正しい金額になっていません。
なぜなら、現時点では「旅費交通費」が500円(チャージした全額)になってしまっているからです。
決算の時点でICカードの残高が100円残っているので、ICカードで支払った金額は400円のはずです。
※500円-100円=400円
だから、「旅費交通費」は400円じゃないといけません。
よって、決算時の仕訳では、「旅費交通費」を貸方に100円計上し、正しい金額に直す必要があります。
それにより、「旅費交通費」の残高を以下のように400円にすることができるわけです。
次に、
2.仮払金を正しい残高にする
に関しても、決算の仕訳をやる前の時点では正しい残高になっていません。
なぜなら、現時点では「仮払金」が0円になってしまっているからです。
決算の時点でICカードの残高が100円残っているので、ICカードの残高を表す「仮払金」は100円じゃないといけないわけです。
よって、決算時の仕訳では、「仮払金」を借方に100円計上し、正しい金額に直す必要があります。
これにより、「仮払金」の残高を以下のように100円にすることができるわけです。
ご覧の通り、「仮払金」の残高は100円となり、正しい残高になりました。
これで、一連の取引は終了です。
ということで、今回はICカードの取引の全6パターンについて解説しました。
そんなに難しい仕訳ではありませんので、必ずマスターしてください。
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