この記事では、日商簿記3級で登場する「仮受金」について、勘定科目の性質や仕訳の意味合いなどを初心者にもわかりやすく説明します。
「仮受金」はなぜ負債なのか?
という疑問に対する説明はもちろん、
「前受金」や「預り金」との違い
についても解説しますので、ぜひ最後まで読んでほしいと思います。
ちなみに、似た名前の「仮払金」という勘定科目もありますが、「仮払金」は資産ですので、役割が全く別ですからね。
「仮払金」についてはこちらの記事で説明しています。
仮受金は負債の勘定科目
日商簿記3級で「仮受金」が使われるのは、不明な入金を受けたときがほとんどなので、それを前提にお話しします。
まず、「仮受金」は負債の勘定科目です。
なぜ負債なのかというと、もしかしたら返さなきゃいけないかもしれないからです。
今言った通り、「仮受金」は不明な入金があった場合に使われる勘定科目になります。
不明な入金とは、たとえば、普通預金や当座預金に内容不明な振込みがあった場合などです。
なぜ振り込まれたのか理由が分からない振込みであっても、入金されたのは事実なので、仕訳をしないわけにはいきません。
このようなときに「仮受金」を使うのです。
不明な入金ということは、相手が間違って振り込んでしまった可能性もあります。
もしそうなら、そのお金は返さないといけません。
ですから「仮受金」は負債だと考えるのです。
仮受金の具体的な仕訳
では、「仮受金」の実際の仕訳問題を見ていきます。
仮受金の基本的な仕訳問題
まずは基本問題からいきましょう。
【問題1】
普通預金に150円の入金があったが、その内容は不明である。
まずは解答を表示します。

内容が不明であっても、入金されたのは事実なので、必ず「普通預金」を増やさないといけません。
で、内容が不明ということは、相手が間違えて入金してしまった可能性も考えられるため、この時点では「仮受金(負債)」に計上しておきます。
もし相手の誤入金なら、当然返還しないといけませんからね。
【問題2】
上記【問題1】の150円は、得意先からの売掛金の回収であることが判明した。
まずは答えを表示します。

内容が判明したので、もう「仮受金」を残しておく必要はありません。
借方に計上して消滅させます。
そして、「売掛金」の回収という事実が今回判明したので、「売掛金」を貸方に計上すれば終了です。
【問題1】と【問題2】の仕訳を並べると次のようになります。

よって結果的には、
(普通預金)150 (売掛金)150
という仕訳を行ったのと同じというわけです。
「仮受金」が一旦間に挟まっているので分かりづらいですが、
結局行われたことは何か?
だけに着目すると、非常にシンプルだと言えます。
【問題3】
普通預金に90円の入金があったが、その内容は不明である。
解答を表示します。

【問題1】と何も変わりませんので特に解説は必要無いでしょう。
【問題4】
上記【問題3】の90円は、手数料の受取額であることが判明した。
解答を表示します。

まず、「仮受金」を全額借方に計上して消滅させます。
そして、手数料の受取額は「受取手数料」という収益に計上します。
【問題3】と【問題4】の仕訳を並べると次のようになります。

よって結果的には、
(普通預金)90 (受取手数料)90
という仕訳を行ったのと同じというわけです。
【問題1】【問題2】の解説でも言いましたが、「仮受金」が一旦間に挟まっているので分かりづらいだけで、
結局行われたことは何か?
だけに着目すると、非常にシンプルです。
このように、一見複雑に見えるような一連の取引も、結果だけを見ると大したことはやっていない場合があります。
今回の問題に限らず、複数の仕訳をまとめて見ていくと、結果としては実はたった1行の仕訳をやっただけということが簿記では結構あります。
「なーんだ、結局これをやっただけじゃん」
ということが分かってくると、簿記に対する理解がどんどん深まってきますので、色々な角度から研究・考察をしていき、簿記という学問がどういった世界なのかを知ることで、本質的な理解につなげていってほしいと思います。
仮受金の応用的な仕訳問題
では次に応用問題です。
少し難しいですが挑戦してきましょう。
【問題5】
以前内容不明の入金として処理していた当座預金への振込額370円は、得意先A社からの売掛金260円の回収及び得意先B社からの手付金の入金110円であることが判明した。
まずは解答を表示します。

最初に考えるべきなのは、以前どんな仕訳をやっていたのか?です。
「内容不明の入金として処理していた当座預金への振込額370円」
ということは、入金を受けた時は次のような仕訳をしていたということが分かります。

よって、この時点での「仮受金」のT勘定は次のようになっています。

で、今回この370円の内容が全て判明したわけです。
ということは、まずやるべきなのは、「仮受金」を消滅させることです。
「仮受金」は不明な入金を認識しておくための勘定科目なのですから、全ての内容が判明した以上、全額を取り消す必要があります。
よって、「仮受金」を全額借方に計上して消滅させてください。
そしてその上で、今回判明した内容を一つ一つ貸方に計上すればOKです。
売掛金回収260円
⇒ 「売掛金」を減らす(貸方に計上)
手付金の入金110円
⇒ 「前受金」を増やす(貸方に計上)
解答の仕訳を改めて表示します。

「仮受金」勘定は、次のように残高がゼロになりました。

仮受金と混同しやすい勘定科目
最後に、「仮受金」と混同しやすい勘定科目について説明します。
前受金と仮受金の違い
「前受金(負債)」は、商品を売る前に受け取ったお金です。
「前受金」の場合は、あくまでもお金を受け取った理由が明確であり、不明な入金である「仮受金」とは明らかに違います。
なお、「前受金」についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、よかったらご覧ください。
預り金と仮受金の違い
「預り金(負債)」は、何らかの理由により一時的に預かったお金を意味します。
「前受金」と同様、「預り金」も明確な理由があって計上されるものです。
「預り金」は、その目的に応じてさらに細分化されることが多く、
- 従業員預り金
- 所得税預り金
- 住民税預り金
- 社会保険料預り金
のように、より細かく勘定科目を設定する場合があります。
ただ、だとしても、「預り金」と付く勘定科目の根本的な性質は同じで、どんな預り金であろうと、何らかの理由によって一時的に預かったお金という意味であることは共通しています。
よって、不明な入金である「仮受金」とはやはり明確な違いがあると言えます。
ということで、今回は「仮受金」について説明しました。
参考になれば幸いです。
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