売上原価の計算(仕入・繰越商品の決算整理仕訳をわかりやすく説明)

決算関連

こいつは決算整理仕訳の代表格と言ってもいいでしょう。

日商簿記検定の3級、2級においてほぼ間違いなく出題されます。

売上原価とは何か?

売上原価の計算とは何をしたいのかと言うと、当期に売れた商品はいくらか?を計算したいんです。

これはもちろん売った商品の原価です。売価ではないですよ。

あくまでも自分が買ったときの値段であって、売り上げた時の値段じゃないです。

売れた金額(原価)のことを売上原価というのです。

例えば、コンビニがペットボトルのお茶を、

  1. 1本60円で100本仕入れ、
  2. 1本あたり100円で全て売った

とすると、売上原価は6,000円です。※1
(ちなみに売上高は10,000円です。※2)

※1 60円×100本=6,000円
※2 100円×100本
=10,000円

商品売買における儲け

商品売買の目的は、買った商品を買った額より高く売って儲けを出すことです。

1年間の商品売買の儲けを計算するためには、いくらで買った商品をいくらで売ったのかということを把握する必要があります。

  • いくらで買ったのか?
  • いくらで売ったのか?

いくらで売ったのかに関しては売上勘定を見れば分かりますね。

決算を迎えた時点での売上勘定の金額が、その期の売上高です。

だからこれは簡単。

問題なのは、いくらで買ったのかの方です。

決算整理前の仕入勘定は当期仕入額

では、 いくらで買ったのかを知るためには、どうすればいいのか?

仕入勘定を見ればOKでしょうか?

違います。

決算整理前の仕入勘定に計上されている金額は、当期買った商品の合計額です。

それがピンとこない方は想像してください。

商品20円を仕入れ、代金は現金で支払った。

(仕入)20 (現金) 20

商品60円を仕入れ、代金は掛けとした。

(仕入) 60 (買掛金) 60

商品40円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。

(仕入) 40 (当座預金) 40

というように、期中は商品を仕入れるたびに、

(仕入) 〇〇 (××) 〇〇

という仕訳を行います。

仮に1年間で上記の3回しか商品を仕入れなかったとすると、決算整理前の仕入勘定は120円です。

このように 決算整理前の仕入勘定は、当期に仕入れた金額を意味しているにすぎません。

仕入・繰越商品の決算整理仕訳

そこで、当期買った商品の合計額当期売った商品の合計額に変える必要があります。

どうしたらその計算ができると思いますか?

もう一度言います。

当期買った商品の合計額当期売った商品の合計額に変えるんです。

これ、実は全然難しくありません。

ただの算数の計算です。

実際の金額を出した方が絶対に分かりやすいので具体例を出します。

売上原価の計算の具体例

【問題】
以下の場合の売上原価はいくらでしょうか?

①期首に持っていた商品の額:20円
②当期に買った商品の額:120円
③期末に残っている商品の額:50円

ちなみに、①が決算整理前の繰越商品勘定の金額で、②が決算整理前の仕入勘定の金額です。

売れたのはいくら分でしょうか?

では計算します。

20+120-50=90

簡単ですね。答えは90円です。

当期売れた商品の金額は90円。

つまり、当期の売上原価は90円ということです。

ちなみに今やった問題の用語は、実際の日商簿記試験などではこのような書かれ方をします。

  • 期首商品棚卸高:20円
  • 当期商品仕入高:120円
  • 期末商品棚卸高:50円

専門用語ってホントにうざいですよね。

でも大丈夫。必ず慣れます。

ちなみに棚卸高とは、有高(ありだか)のことです。あった額です。

つまり、期首商品棚卸高とは期首に商品があった額ってことです。

仕入勘定内で売上原価を計算する

では、今やった計算を仕訳で表すとどうなるか?

さっきも言ったように決算整理前の仕入勘定は当期に買った商品の額が記載されています。

上の例題でいう120円です。

その金額に期首商品を足して期末商品を引けば良いんです。

期首を足して期末を引く。

なので以下のように仕訳を2つ行います。

(仕入) 20  (〇〇) 20
(〇〇) 50  (仕入) 50

このような仕訳になるわけです。

ちゃんと期首を足して期末を引く、が実現できてますよね。

これによって仕入勘定の残高は90になっています。

これで売上原価の計算は完了です。

繰越商品の仕訳

では、上でやった2つの仕訳の○○の部分には何が入るでしょうか?

仕入の相手勘定の○○と書いてある部分です。この2カ所には同じ勘定科目が入ります

今回のお話、売上原価を計算することに主眼を置いてここまで進めてきましたが、実はもう一つの側面があります。

それは繰越商品勘定です。

決算整理前の繰越商品には期首の金額が載っています。

期首の金額ってことは、つまり前期末の金額ってことです。

繰越商品勘定は期中にいじることがないので最後まで期首の金額が維持されています。

でもその金額を当期の最終値にしてはいけません。その金額はあくまでも当期首(前期末)の金額だからです。

なので、当期首の金額を当期末の金額に変える必要があります。

そこで、さっきの二つの仕訳をもう一度見てみましょう。

(仕入) 20  (〇〇) 20
(〇〇) 50  (仕入) 50

もう一度言います。

当期首の金額を当期末の金額に変えるんです。

どうやって変えるか?

期首の金額を引いて0にした上で、期末の金額を足せばいいんです。

もうお分かりですね。正解は、

(仕入) 20  (繰越商品) 20
(繰越商品) 50  (仕入) 50

となるわけです。

これが売上原価の決算整理仕訳です。

『売上原価は仕入勘定で計算する』の意味

精算表の問題とか貸借対照表・損益計算書を作る問題なんかでよくある文言として、

『売上原価は仕入勘定で計算する』

ってのがありますが、これは言葉の通り、売上原価の計算は仕入勘定内で行ってください、という意味です。

もっと分かりやすく言うと、現在の仕入勘定の金額を、売上原価の金額に変えてくれ、ということです。

さっきの例題の金額でいうと、仕入勘定の残高を120円から90円に変えてくれ、という意味です。

(仕入) 20  (繰越商品) 20
(繰越商品) 50  (仕入) 50

という仕訳によって、仕入勘定は、

120円 ⇒ 90円

と変わったわけですから、これでいいということです。

しくりくりし

この仕訳で、仕入勘定の問題と繰越商品勘定の問題を一気にクリアできました。

これで決算整理仕訳の一つである売上原価の計算は終わりです。

ちなみにこの2行の仕訳、商業高校なんかでは仕入繰商繰商仕入(しいれくりしょうくりしょうしいれ)なんて呪文のように暗記して覚えたりします。

もっと略して『し・くり・くり・し』と言うこともあります。

暗記してしまえば理解してなくても問題は解けます。解けますが、個人的にはしっかりと意味合いを理解して解いた方が良いと思います。

ともあれ、これで売上原価の計算は終了となります。

今回の話は僕のYoutubeチャンネルでも説明していますので、動画のほうが理解しやすいという方はこちらをどうぞ。

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