この記事では簿記初心者を激烈に苦しめるT勘定の書き方について徹底的に解説します。
T勘定は、T字勘定とかTフォームとも呼ばれますが、この記事ではT勘定で統一します。
T勘定の説明に関しては、具体例を示さないことには始まらないので、今回はいきなり問題を出し、その問題を使って説明をします。
T勘定が苦手な人は、書き方のコツが分かっていません。
そういう方は同じミスを繰り返す傾向にあります。
逆に、T勘定の記入がキッチリできる人は、コツが分かっているのです。
この記事ではミスをしやすいポイントを分かりやすく説明しますので、しっかりと読み込めば、T勘定に対する苦手意識はキレイさっぱり無くなることでしょう。
仕訳問題を2つ出題し、その仕訳をT勘定に転記する練習をしていきます。
T勘定の書き方を練習(仕訳問題)
では、仕訳の具体例を出してT勘定の書き方を見ていきます。
【問題1】7月3日、商品100円を仕入れ、代金は現金で支払った。
この問題の仕訳は次の通りです。

では、この仕訳を次のT勘定に記入してみましょう。

まずは解答を下に表示します。

では、仕入勘定から説明します。
まず、絶対に間違えないで欲しいのは、仕入勘定の借方側(左側)を使うということです。
超重要なことなのでもう一度いいます。
仕入勘定の借方に記入します。
なぜなら、仕訳において、「仕入」は借方に計上しているからです。
ですから、この問題において仕入のT勘定に記入を行うときは、まずは借方側に記入するんだということを強く自分に言い聞かせてください。
その意識さえしっかりできていれば、T勘定の記入ミスは極端に減ります。

で、次に記入方法ですが、書くのは次の3つです。
左から順に、
- 日付
- 相手勘定
- 金額
です。
このポジションは決まっていますので、変えないでください。
左から順に、
日付・相手勘定・金額
です。
ただ、実際に自分で記入するときのタイミングに関しては、日付と金額を先に書いて、最後に相手勘定を書くのが良いと思います。
つまり、日付と金額を先に書くとはこういうことです。

で、ここまで書けたら、最後に相手勘定(現金)を書きます。

相手勘定とは、仕訳において反対側に書いた勘定科目のことです。
今回の仕訳における「仕入」の反対側の勘定科目は「現金」です。
「仕入の相手は現金」
ということです。だから相手勘定と呼ばれるのです。
ちなみに、相手勘定のことを相手勘定科目とか相手科目と言う場合もあります。
で、なぜ相手勘定はタイミング的に最後に書くべきだと僕が思うのかというと、
『そこに書くのは、あくまでも相手勘定だぞ』
ということを強く自覚したいからです。
T勘定が難しい原因の90%以上は、相手勘定にあると僕は思っています。
こいつさえいなければ、T勘定など簿記学習者の敵ではありません。
相手勘定が存在することによって、T勘定において『とある勘違い』が頻発します。
どんな勘違いかというと、貸借を逆に考えてしまう勘違いです。
「仕入」のT勘定をもう一度表示します。

ご覧の通り、仕入勘定の借方側に「現金」と書いてあります。
で、これをパッと見の感覚で考えてしまうと、あたかも「現金」が借方に計上されているかのように見えます。
自分で答えを書き込んでいる際も、「現金」を借方に計上しているかのような感覚になりがちです。
ですが、それは錯覚です。
仕訳はあくまでも、
(仕入) 100 (現金) 100
ですから、「現金」は貸方に計上されています。
「仕入」のT勘定に書いてある【現金】は、あくまでも相手勘定です。
「仕入」のT勘定に書いてある【現金】は、あくまでも相手勘定です。
(重要なことなので2回言いました)
このことを、なんとなくではなく、完璧に認識しておいてください。
そうでないと、いざ記入しようとしたときに、たちまち自分の解答に自信が持てなくなり、頭の中がごちゃごちゃになってしまい、結果、とんちんかんな記入をしてしまう恐れがあります。
よく目にするT勘定のミスは、次のように書いてしまうことです。

「仕入」のT勘定への記入にもかかわらず、相手勘定を「仕入」にしてしまうミスです。
(こんな記入はあり得ません)
ちなみに、試しにこれを仕訳に直すと、
(仕入) 100 (仕入) 100
となります。
これは全くもって無意味な仕訳であり、当然のことながら、こんな仕訳は存在しません。
仕訳問題なら、こういった意味不明な解答を書き込んでしまうことはほとんどあり得ないと思います。
でもなぜかT勘定になると、このようなミスをしてしまう人が多いです。
T勘定でこういう間違いが起こる原因としては、仕訳の借方が「仕入」なので、T勘定の借方にも、その勢いで同じ言葉を書いてしまうことだと思います。
あるいは、次のようなミスも考えられます。
今回の仕訳である、
(仕入) 100 (現金) 100
の転記として、下のような記入してしまうミスです。

仕入勘定の貸方側を使ってしまうミスです。
日付・相手勘定・金額の記入内容自体は正しいのですが、逆サイド(貸方側)に書いてしまっています。
このミスも、元を辿れば、相手勘定の存在によって頭が混乱し、貸借を勘違いしてしまったことが原因でしょう。
今挙げたようなミスは、視覚的・感覚的にやってしまうと起きやすいので、特にまだ慣れていないうちは要注意です。
このような間違いを起こさないためにも、【相手勘定は最後に書く】を徹底してください。
それを徹底することで、相手勘定はあくまでも仕訳の反対側の科目を書くんだという意識を強く植え付けることができます。
長くなってしまったので注意点をまとめますと、
- まずはT勘定のどっちサイドに書くのかを強く認識する
- 相手勘定は、仕訳における反対側の勘定科目を書く
です。
この2つのポイントさえ守れば、T勘定でミスることはまずあり得ないと僕は断言します。
ではそれを踏まえて、今度は「現金」のT勘定の記入を説明します。
仕訳を改めて表示します。

仕訳において「現金」は貸方に計上していますので、まずは現金のT勘定の貸方側を使うことを強く認識してください。

それができたら、記入する内容の確認です。
左から順に、
- 日付
- 相手勘定
- 金額
と書きます。
ただし、書くタイミングの順は、まずは日付と金額です。
その2つを書くと、T勘定は次のような状態になります。

ここまで書けたら、最後に相手勘定を書いてください。
「現金」の相手勘定は「仕入」です。

ということで、1問目は終了です。
不安な方はもう一度読み返してみてください。
では次に、相手勘定が複数の場合の記入の仕方を見ていきます。
【問題2】7月9日、商品170円を売り上げ、代金のうち50円は普通預金に入金され、残額は掛けとした。
この問題の仕訳は次の通りです。

では、この仕訳を次のT勘定に記入してみましょう。

まずは解答を下に表示します。

「普通預金」と「売掛金」のT勘定に関しては、書き方は【問題1】と何も変わりません。
【問題1】のところで説明した通り、
- 日付
- 相手勘定
- 金額
を書いていけばOKです。
まぁ、一つ補足があるとすれば、相手勘定についてですかね。
「普通預金」「売掛金」ともに、相手勘定は「売上」です。
何が言いたいのかというと、「普通預金」の相手も「売上」だし、「売掛金」の相手も「売上」だということです。
若干混乱しやすい部分かもしれませんので、念のため補足しておきました。
では次、この問題の本題である、「売上」のT勘定です。
まず、日付と金額は通常通りなので、まずはその2つを記入します。

ここまでできたら、最後に相手勘定の書き方なのですが、「売上」の相手勘定は2つあります。
「普通預金」と「売掛金」です。
相手勘定が2つあるからといって、無理矢理2つをねじ込むことはできません。
じゃあどうするのかというと、
『相手勘定は複数ありますよ』
を意味する用語を記入します。
この用語を「諸口」といいます。
読み方は「しょくち」です。
これは、相手勘定が複数存在する場合に使用する用語です。

複数なので、相手勘定が2つでも3つでも4つでも同じです。
相手勘定が2つ以上の場合には「諸口」と記入することを覚えておきましょう。
書き方を意識をすることの大切さ
T勘定の書き方をマスターするためには、意識をすることが物凄く重要です。
感覚的にやってしまうと何らかのミスが起きやすい論点ではありますので、先ほど解説で言った、
- まずはT勘定のどっちサイドに書くのかを強く認識する
- 相手勘定は、仕訳における反対側の勘定科目を書く
を強く認識しながら練習を行ってください。
それをせず思考停止で解いていても、T勘定に関してはあまり上達しません。
たとえば、仕訳問題なんかは、慣れがモノを言うところがあり、ひたすら練習を繰り返すことで勝手に習熟度が上がっていく傾向にあるのですが、T勘定はそうではありません。
本当、フィーリングに頼っているといつまで経っても同じ間違いを起こし続ける恐れがあります。
簿記3級を学習している方にとってT勘定は厄介極まりない存在ですが、キッチリと意識付けをした上で練習を重ねれば、必ずコツを掴むことができます。
そして、一旦できるようになってしまえば、所詮T勘定などただの単純作業だということが分かるでしょう。
T勘定というのはつまるところ、結局は仕訳からの転記(書き写し)でしかありません。
- まずはT勘定のどっちサイドに書くのかを強く認識する
- 相手勘定は、仕訳における反対側の勘定科目を書く
この2つをしっかりと意識しながら、何度も問題を解いてみてください。
必ずマスターできます。
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