この記事では、消費税の仕訳について、
- 仕入時
- 売上時
- 決算整理
- 納付時(次期の処理)
を全て解説します。
消費税の仕訳は、やること自体は難しくないのですが、仕組みと流れを理解しないと一向にできるようになりません。
僕の生徒さんを見ていても、いつまで経っても仕訳問題が解けなかったり、同じ間違いを繰り返してしまう方は、処理の流れを押さえることができていません。
なのでこの記事では、まずは消費税の仕組み・流れを解説し、そのあとに仕訳や勘定科目について説明していきます。
消費税の仕組み(なぜ差額を支払うのか?)
消費税というのは、僕ら消費者にとっては、
・物を買ったときに店に対して払うもの
という認識だと思います。
コンビニやスーパーなどで物を買ったり、飲食店などを利用したときに、代金に対して「10%」か「8%」の消費税がかかりますよね。
でも、会社(店)の立場から考えると、消費税は、
物を買ったときに店に対して払うもの
でもあり、
物を売ったときに客から受け取るもの
でもあり、
国に納付するもの
でもあります。
では、これから具体的な金額を出して流れを説明します。
ストーリーとしては、
税抜60円で仕入れた商品(ボールペン)を税抜100円で売った
です。
話を分かりやすくするために、1年間の仕入と売上は上記のみとします。
まぁ、別に商品はボールペンじゃなくても良いのですが、イメージしやすいように身近な物としてボールペンを想像してください。
代金は掛けにはせず、『支払い』も『受け取り』も全て現金で行います。
消費税率は10%という設定です。
(税率は簿記の問題では必ず与えられます)
では、まずは商品を税抜60円で仕入れます。
税抜60円ということは、消費税が6円かかります。
※60円×10%=6円
よって、税込66円を支払うことになります。
図で表すとこんな感じです。
では次に、仕入れた商品を税抜100円で売り上げます。
税抜100円ということは、消費税が10円かかります。
※100円×10%=10円
よって、税込110円を受け取ることになります。
図で表すとこんな感じです。
「仕入」と「売上」を繋げると次のような図になります。
ではここから消費税の処理について考えていきます。
上記の取引の消費税だけに着目すると、
- 支払った消費税は6円
- 受け取った消費税は10円
です。
これにより納付すべき消費税を計算することができます。
会社が納付すべき消費税額は、
1年間で受け取った消費税
から
1年間で支払った消費税
を差し引いて計算します。
よって、納付すべき消費税は差額の4円です。
※10円-6円=4円
これについて、
「消費税の納付額はなぜ差額で計算するのか?」
という疑問を持つ人は多いですが、これは、消費税法という法律で決まっているからです。
なぜそう決まっているのかというと、『二重課税にならないようにするため』ってのが理由なのですが、簿記の学習でそこまで考える必要は全くありません。
税法の試験ではないですからね。
簿記検定においては消費税の大まかな仕組みを知っていれば何の問題もありません。
消費税の納付額は、
1年間で受け取った消費税
から
1年間で支払った消費税
を差し引いて計算する。
とにかくこのルールを押さえてください。
特に、一般的にあまり知られていないのは、
『支払った消費税』の扱い方
です。
『受け取った消費税』をあとで国に納付しなければならないことは、ほとんどの人が知っていることです。
ですが、納付額の計算の仕組みとして、支払った消費税を控除できるというルールは、一般的にはあまり知られていないように思います。
今回の例で言うと、
10円から6円を引いた4円だけを、あとで納めればいいのです。
これが、
「消費税はなぜ差額で計算するのか?」
の答えです。
この仕組みを知らないと、消費税の会計処理の意味が理解できないので、まずはこの計算方法を頭に入れてください。
その上で、簿記の仕訳を練習するとスムーズに進みます。
消費税の仕訳(仕入・売上・決算整理)
ではここから、消費税の実際の仕訳を見ていきます。
先ほどお話しした、
- 60円(税抜)で仕入れた商品を
- 100円(税抜)で売り上げた
という例を仕訳で行っていきます。
なお、消費税の仕訳の方法には「税抜方式」と「税込方式」の2つがありますが、日商簿記検定で出題されるのは「税抜方式」だけなので、このあとの問題は全て「税抜方式」を前提に説明します。
仕入時の仕訳(仮払消費税の計上)
まずは仕入時の仕訳です。
【問題1】
商品60円(税抜価額)を仕入れ、代金は現金で支払った。消費税率は10%である。
では、まずは解答を表示します。
最初に強く意識してほしいのは、「仕入」として計上する額は消費税を含まないということです。
「仕入」の額は必ず税抜の金額です。
ですから、借方に「仕入60」と計上します。
一方、消費税の6円は将来納付すべき消費税を減らす効果があると考え、「仮払消費税(資産)」に計上します。
そして、税込の66円を「現金」で貸方に計上すれば仕訳は完了です。
念のためこの時点での「仮払消費税」のT勘定を表示しておきます。
売上時の仕訳(仮受消費税の計上)
次に売上時の仕訳です。
【問題2】
商品100円(税抜価額)を売り上げ、代金は現金で受け取った。消費税率は10%である。
まずは解答を表示します。
最初に強く意識してほしいのは、「売上」として計上する額は消費税を含まないということです。
「売上」の額は必ず税抜の金額です。
ですから、貸方に「売上100」と計上します。
一方、消費税の10円は将来納付すべき消費税と考え、「仮受消費税(負債)」に計上します。
そして、税込の110円を「現金」で借方に計上すれば仕訳は完了です。
念のためこの時点での「仮受消費税」のT勘定を表示しておきます。
決算整理仕訳(未払消費税の計上)
次に決算整理仕訳です。
あとで納付すべき消費税額がこのタイミングで決まります。
実際に納付するのはまだ先です。
【問題3】
決算を迎えたため、消費税の決算整理仕訳を行う。仮払消費税は6円、仮受消費税は10円である。
まずは解答を表示します。
では解説をします。
最初に状況把握です。
期中の仕訳によって、「仮払消費税」と「仮受消費税」のT勘定は、それぞれ次のようになっていました。
ちなみに、決算整理前残高試算表(一部抜粋)はこうです。
では仕訳を考えていきますが、まず、
- 「仮払消費税(資産)」を全額貸方に計上
- 「仮受消費税(負債)」を全額借方に計上
します。
つまり、「仮払消費税」「仮受消費税」ともに逆側に仕訳をして消滅させるということです。
その結果、「仮払消費税」と「仮受消費税」のT勘定はこうなります。
そして、その差額を「未払消費税(負債)」に計上します。
「未払消費税」のT勘定はこうなります。
「未払消費税」は、あとで納付すべき消費税額を意味します。
実際に納付をするのは翌期です。
なお、決算整理後残高試算表(一部抜粋)はこうなります。
消費税に関する勘定科目は「未払消費税」だけが載ります。
「仮払消費税」と「仮受消費税」は残高がゼロになりましたので載りません。
これで決算整理仕訳の解説は終了です。
なお、
「もしも仮払消費税が仮受消費税よりも大きかったらどうなるの?」
と思った方もいるかもしれません。
その場合は【消費税の還付】という処理を行います。
(日商簿記2級)
日商簿記3級の範囲からは外れますが、【消費税の還付】は次の記事で詳しく説明しておりますので、興味のある方はご覧ください。
翌期の納付時の仕訳(未払消費税の消滅)
最後に納付時の仕訳です。
これは非常に簡単です。
【問題4】
前期決算で計上した未払消費税4円を現金で支払った。
解答を表示します。
これで、消費税の一連の取引は終了です。
消費税は費用とはならない
最後に仕訳の流れを復習します。
今やった問題の仕訳をまとめると次のようになります。
仕入時
売上時
決算時
納付時
見ての通り、消費税が『費用』で処理されることはありません。
(※「税込方式」の場合は費用処理されますが、「税込方式」は日商簿記検定に出題されないので考えなくていいです)
『費用』としては処理をせず、
- 「仮払消費税(資産)」
- 「仮受消費税(負債)」
- 「未払消費税(負債)」
を使って仕訳をしていくことになります。
消費税の仕訳は、忘れると本当にワケが分からなくなりますので、この仕訳の流れをしっかりと押さえてください。
それでは、今回の内容は以上となります。
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