この記事では、一部現金取引の本試験レベルの問題について分かりやすく解説します。
一部現金取引は、伝票問題の中で特に難しいと思われがちですが、実は確実に解ける方法が存在します。
【10回やったら10回正解できる】という、とてつもなく再現性の高い必勝パターンがあるのです。
そのコツを分かりやすく解説しますので、苦手な方は必ず最後まで読んでください。
なお、今回の記事は応用問題についての解説になりますので、
そもそも一部現金取引って何?
という方は、以下の記事を先に読むことをおすすめします。
【伝票問題②】一部現金取引の分解と擬制をわかりやすく解説(簿記3級)
一部現金取引の本試験レベルの問題を実践解説
では、実際に問題を使って解説していきます。
2問やっていきましょう。
【問題1】
次の取引について、出金伝票の記入が下記の通りであった。この場合の振替伝票の内容を推定し、完成させなさい。ただし、取引を分解する方法と取引を擬制する方法のどちらを採用しているのかは各自判断すること。
・商品300円を仕入れ、代金のうち120円は現金で支払い、残額は掛けとした
では、まずは解答を表示します。
この問題の唯一にして最大の山は、
- 取引を分解する方法
- 取引を擬制する方法
のどちらなのかを判断することです。
その判断さえできれば簡単に正解できます。
ちなみに、こちらの記事でも言いましたが、
- 取引を擬制する方法
のことを、僕はでっち上げと呼んでいます。
存在しない仕訳を、あたかも存在するかのように考えて伝票を起票する方法なので、【でっち上げ】と僕が勝手に命名しました。
まぁ、呼び方はどうでも良いっちゃどうでも良いんですけどね。
で、こういった問題を解く時の手順としては、次のようになります。
ステップ1
まずは取引を普通に仕訳する
ステップ2
「分解」なのか「擬制」なのかを判断するために、上記【ステップ1】の仕訳を見ながら、「分解」と「擬制」の両方の仕訳を書き出す
ステップ3
- 上記【ステップ2】の仕訳
- 最初から伝票に印字されている内容
の2つを見て、「分解」なのか「擬制」なのかを判断し、解答する
では、3つのステップをやっていきます。
ステップ1
まずは普通に仕訳をします。
ステップ2
次に、【ステップ1】の仕訳を見ながら、「分解」と「擬制」の両方の仕訳を書き出きます。
めんどくさがってこの作業を省略すると、ミスをする確率が跳ね上がります。
「地道に確実に作業をするぞ」
という気持ちが非常に重要です。
丁寧にやってもそんなに時間はかかりませんので、めんどくさがらないでください。
そして、焦らないでください。
ステップ3
- 上記【ステップ2】の仕訳
- 最初から伝票に印字されている内容
の2つを見て、「分解」なのか「擬制」なのかを判断します。
【ステップ2】の仕訳を伝票に起票するとしたら次のようになります。
これを把握した上で、最初から印字されている伝票の記載を見てください。
今回の問題は、出金伝票に、最初から『仕入120』と書いてあります。
これを仕訳で表すと、
(仕入) 120 (現金) 120
です。
この仕訳が含まれているのは、「分解」と「擬制」のどちらでしょうか?
先ほど書いた、「分解」と「擬制」の両方の仕訳を見れば簡単に分かります。
答えは「分解」です。
ということで、「分解」の方法で起票していることが判明しましたので、その前提で振替伝票に穴埋めをしていけばいいということです。
振替伝票に記載すべき仕訳は、
(仕入) 180 (買掛金) 180
です。
この仕訳が振替伝票の内容ということになります。
【問題2】
次の取引について、入金伝票および振替伝票に起票した場合の内容を推定し完成させなさい。ただし、取引を分解する方法と取引を擬制する方法のどちらを採用しているのかは各自判断すること。
・商品500円を売り上げ、代金のうち200円は現金で受け取り、残額は掛けとした
では、まずは解答を表示します。
この問題も、先ほどやった【問題1】と同じで、
- 取引を分解する方法
- 取引を擬制する方法
のどちらなのかの判断さえできれば、もう正解できたも同然です。
攻略の仕方は【問題1】と同じで、次の3つのステップを踏んでいけばいいわけです。
(以下、【問題1】の解説と重複する文章がありますが、復習として読んでください)
ステップ1
まずは取引を普通に仕訳する
ステップ2
「分解」なのか「擬制」なのかを判断するために、上記【ステップ1】の仕訳を見ながら、「分解」と「擬制」の両方の仕訳を書き出す
ステップ3
- 上記【ステップ2】の仕訳
- 最初から伝票に印字されている内容
の2つを見て、「分解」なのか「擬制」なのかを判断し、解答する
では、3つのステップをやっていきます。
ステップ1
まずは普通に仕訳をします。
ステップ2
次に、【ステップ1】の仕訳を見ながら、「分解」と「擬制」の両方の仕訳を書き出きます。
【問題1】の解説でも言いましたが、絶対にこの作業は省略しないでください。
勘定科目を略すくらいなら全然良いと思いますが、仕訳自体を全く書かないというのは危険です。
勘違い等によるミスをする可能性が高くなります。
ですから、めんどくさがらずに必ず仕訳を書きましょう。
ステップ3
- 上記【ステップ2】の仕訳
- 最初から伝票に印字されている内容
の2つを見て、「分解」なのか「擬制」なのかを判断します。
【ステップ2】の仕訳を伝票に起票するとしたら次のようになります。
これを把握した上で、最初から印字されている伝票の記載を見てください。
今回の問題は、入金伝票に、最初から「売掛金」と書いてあります。
金額は書いてありませんが、勘定科目だけ、「売掛金」と印字されています。
これが何を意味しているのか分かるでしょうか?
この入金伝票の内容を勘定科目だけで仕訳してみます。
そうすると、
(現金) ○○ (売掛金) ○○
となります。
金額は入金伝票を見ても分かりませんので、金額は『○○』として仕訳しました。
ですが、実はこの情報から、「分解」と「擬制」のどちらなのかを判断できるのです。
先ほど書いた、「分解」と「擬制」の両方の仕訳を見れば簡単に分かります。
答えは「擬制(でっちあげ)」です。
なぜかというと、
借方『現金』 貸方『売掛金』
という仕訳が含まれているのは「擬制」のほうだけだからです。
「擬制」のほうには、
(現金) 200 (売掛金) 200
という内容の入金伝票がありますからね。
よって、入金伝票の金額欄は『200』となります。
で、「擬制」の方法で起票していることが判明しているわけですから、その前提で振替伝票に穴埋めをしていけばいいということです。
振替伝票に記載すべき仕訳は、
(売掛金) 500 (売上) 500
です。
この仕訳が振替伝票の内容ということになります。
一部現金取引の問題を解くコツ(必ず心掛けてほしいこと)
ということで、一部現金取引の応用問題を2問行いました。
今回行った2つの問題は、完全に本試験レベルの問題なので、スムーズに解けたのであれば、伝票についての習熟度は非常に高いと思って良いでしょう。
もし初見で解けなったとしても、落ち込む必要はありません。
この記事の解説を繰り返し読み、やるべき手順を押さえれば、必ず解けるようになります。
再度手順を言いますと、
ステップ1
まずは取引を普通に仕訳する
ステップ2
「分解」なのか「擬制」なのかを判断するために、上記【ステップ1】の仕訳を見ながら、「分解」と「擬制」の両方の仕訳を書き出す
ステップ3
- 上記【ステップ2】の仕訳
- 最初から伝票に印字されている内容
の2つを見て、「分解」なのか「擬制」なのかを判断し、解答する
となります。
最も重要なのは、3つのステップを必ず行うことです。
試験に合格するために重要なことはいくつかありますが、その中の一つは、ミスをしないことです。
- 分かっているのに凡ミスで点数を落としてしまう
- 知識はあるのに、その場のちょっとした勘違いで間違えてしまう
このようなことを、【いかに起こさないか】が非常に非常に重要なのです。
これは伝票の問題に限らず、全ての簿記の問題に共通します。
で、そのために大事なのが、問題を解く際の『型』を持つことです。
『型』を持つとはつまり、今回の問題で言えば、3つのステップを絶対に踏むことです。
他の問題で言うなら、あくまでも例えばの話ですけど、
【タイムテーブルを書く】
だったり、
【勘定のボックス図は必ず書く】
などがあるかと思います。
このような、
「この手の問題は自分はこうやって解く」
という、確固たる『型』『フォーム』を持っておくと、安定感が増すというか、毎回高確率で正解できるようになるのです。
いつもいつも同じ手順、同じやり方で問題を解くことができるわけですから、再現性が高いのは当然です。
それをせず、やるべき作業をショートカットしたり、メモを書かずに全て頭の中だけでやろうとしたりすると、どこかでミスが発生します。
あるいは、【正解できるときもあれば、間違える時もある】というように、安定した結果を出すことができず、解けるか解けないかは運次第という状態になってしまいます。
ですから、問題を解くときの自分なりの『型』を持ち、それを忠実に実行するようにしてください。
必要な
- 仕訳
- メモ書き
- 図
などは、めんどくさがらずに必ず書いてください。
そうすれば、演習におけるミスは劇的に改善されるはずです。
ということで、一部現金取引の解き方の解説は以上となります。
難易度の高い内容なので、これが解けると他の受験生に明確な差をつけることができますからね。
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