今回は受取手形記入帳と支払手形記入帳について具体例を出してわかりやすく解説します。
受取手形記入帳と支払手形記入帳について、日商簿記3級の本試験で出題されるパターンとしては、
- 受取手形記入帳、支払手形記入帳に必要事項を記入する問題
- 受取手形記入帳、支払手形記入帳を読み取って仕訳を行う問題
の2つですが、
本試験を考えると、圧倒的に出題の可能性が高いのは、
2.受取手形記入帳、支払手形記入帳を読み取って仕訳を行う問題
の方なので、それについて解説します。
仕訳を正確に行うためには記載内容を理解する必要がありますので、一つ一つの欄の意味を分かりやすく説明していきます。
特に『てん末』の欄に関しては、意味を理解していない人が多い印象がありますので、
「てん末ってどういう意味?」
「てん末に書いてある日付に行うべき仕訳が分からない」
という方は必ず最後まで読んでください。
受取手形記入帳と支払手形記入帳の読み取り方はほぼ同じ
まず、受取手形記入帳と支払手形記入帳とは何かを説明します。
ざっくり言うと、
- 受取手形記入帳は、「受取手形」についての詳細を記載する帳簿
- 支払手形記入帳は、「支払手形」についての詳細を記載する帳簿
です。
まぁ、そのまんまですね。
受取手形記入帳の実物はこんなやつです。

内容としては、左から、
- 日付
- 手形種類
- 手形番号
- 摘要
- 支払人
- 振出人または裏書人
- 振出日
- 満期日
- 支払場所
- 手形金額
- てん末
となります。
(一つ一つの欄の意味合いは、仕訳問題の解説で説明します。)
支払手形記入帳の実物はこんなやつです。

内容としては、左から、
- 日付
- 手形種類
- 手形番号
- 摘要
- 受取人
- 振出人
- 振出日
- 満期日
- 支払場所
- 手形金額
- てん末
となります。
(一つ一つの欄の意味合いは、仕訳問題の解説で説明します。)
見ての通り、受取手形記入帳と支払手形記入帳は非常によく似ています。
両者を並べてみますね。

ほぼ同じと言っても良いくらい似ています。
なので、この両者は、読み取りの仕方は同じだと思っていいでしょう。
受取手形記入帳が読み取れる人なら、支払手形記入帳も読み取れます。
その逆もまたしかりです。
立場を反対にして考えれば良いだけですからね。
具体的な仕訳問題
では、ここから仕訳問題を使って説明します。
受取手形記入帳と支払手形記入帳を見て、特定の日付けの仕訳を行う問題です。
受取手形記入帳
【問題1】
次の受取手形記入帳を見て、答案用紙の各日付の仕訳をしなさい。なお、手形代金は当座預金に入金されている。


では、まずは解答を表示します。

受取手形記入帳は、受取手形1枚につき1行の記載です。
今回の問題では2行分の記載があるので、現在管理している受取手形の数は2枚ということです。
以下に、受取手形記入帳の各欄の説明をします。
×年

これは受取手形が発生した日です。
よって、
- 1行目の受取手形は5月3日
- 2行目の受取手形は6月4日
に発生しています。
手形種類

手形の種類です。
日商簿記の3級と2級では、手形の種類は約束手形だけなので、ここは約束手形以外あり得ません。
略して『約』とか『約手』とか書いてあることが多いです。
約束手形に決まっていますので、この欄を見る必要はありません。
手形番号

手形の番号です。
仕訳には何の影響も無いので見る必要はありません。
摘要

ここは重要です。
受取手形が発生した原因の勘定科目が記載されてます。
今回は、
- 1行目の受取手形の発生原因は「売上」
- 2行目の受取手形の発生原因は「売掛金」
です。
支払人

相手の会社名です。
よって、
- 1行目の受取手形の相手はA社
- 2行目の受取手形の相手はE社
です。
振出人または裏書人

ここは原則「支払人」と同じになります。
よって、この欄はスルーしてOKです。
ちなみに、念のため言っておきますが、
- 振出人⇒手形を振り出した(作った)会社
- 裏書人⇒手形の裏書をした会社
です。
裏書は日商簿記2級の範囲なので今は気にしなくて大丈夫です。
振出日

これは受取手形が発生した日です。
よって、一番左の『×年』の欄と同じ記載になりますから、この欄も見る必要はありません。
満期日

その手形が決済される予定の日です。
よって決済日は、
- 1行目の受取手形が8月3日
- 2行目の受取手形が9月4日
になります。
支払場所

どの銀行で支払われるかの情報ですが、簿記の処理を行う上ではどうでもいいことなので、無視してOKです。
手形金額

そのまま、受取手形の金額です。
- 1行目の受取手形は400円
- 2行目の受取手形は700円
です。
てん末

てん末の欄は、最後どうなったのか?を意味します。
『てん末』の日本語の意味としては、【物事の始まりから終わりまで】です。
でも、受取手形記入帳での使われ方としては、最後どうなったのか?と言う意味で使われます。
つまり、
てん末=結末
です。
1行目の受取手形は、てん末の欄に、
『8月3日入金』
と書いてあります。
ということは、この手形は8月3日に既に入金されたということです。
一方で、2行目の受取手形のてん末欄は空欄になっています。
空欄ということは、まだ結末を迎えていないことを意味します。
つまり、2行目の受取手形はまだ入金されていないということです。
2行目の受取手形の満期日は9/4ですから、今現在はまだ9/4より前なのでしょう。
以上、全ての欄について説明しました。
説明した通り、【見なくてもいい欄】が結構あります。
その欄に×を付けると次のようになります。

こうすると、見るべきポイントは意外に少ないことが分かりますね。
これらのことを踏まえ、各日付に行うべき仕訳を考えます。
【5月3日】

5月3日は1行目の受取手形が発生した日です。
摘要には「売上」と書いてあるので、売上によって受取手形が発生したことが分かります。
そして金額は400円です。
よって仕訳は、

となります。
【6月4日】

6月4日は2行目の受取手形が発生した日です。
摘要には「売掛金」と書いてあるので、売掛金を手形で回収したことが分かります。
そして金額は700円です。
よって仕訳は、

となります。
【8月3日】

8月3日は1行目の受取手形を決済した日です。
問題文より、手形代金は当座預金に入金されていることが分かりますので、仕訳は次のようになります。

支払手形記入帳
【問題2】
次の支払手形記入帳を見て、答案用紙の各日付の仕訳をしなさい。なお、手形代金の支払いは当座預金から行っている。


では、まずは解答を表示します。

支払手形記入帳の読み取り方は受取手形記入帳とほとんど同じです。
支払手形記入帳も、支払手形1枚につき1行の記載です。
今回の問題では2行分の記載があるので、現在管理している支払手形の数は2枚ということです。
以下に、支払手形記入帳の各欄の説明をします。
×年

これは支払手形が発生した日です。
よって、
- 1行目の支払手形は2月9日
- 2行目の支払手形は3月5日
に発生しています。
手形種類

手形の種類です。
日商簿記の3級と2級では、手形の種類は約束手形だけなので、ここは約束手形以外あり得ません。
略して『約』とか『約手』とか書いてあることが多いです。
約束手形に決まっていますので、この欄を見る必要はありません。
手形番号

手形の番号です。
仕訳には何の影響も無いので見る必要はありません。
摘要

ここは重要です。
支払手形が発生した原因の勘定科目が記載されてます。
今回は、
- 1行目の支払手形の発生原因は「仕入」
- 2行目の支払手形の発生原因は「買掛金」
です。
受取人

相手の会社名です。
よって、
- 1行目の支払手形の相手はB社
- 2行目の支払手形の相手はC社
です。
振出人

振出人とは、言葉の通り手形を振り出した会社です。
ここは当社に決まってますので、この欄はスルーしてOKです。
ちなみに、念のため説明しますが、『手形を振り出す』とは、【手形を発行して相手に渡す】という意味です。
当社にとっての「支払手形」ということは、当然それを振り出したのは当社ということになります。
振出日

これは支払手形を振出した日、つまり支払手形が発生した日です。
よって、一番左の『×年』の欄と同じ記載になりますから、この欄も見る必要はありません。
満期日

その手形が決済される予定の日です。
よって決済日は、
- 1行目の受取手形が5月9日
- 2行目の受取手形が6月5日
になります。
支払場所

どの銀行で支払われるかの情報ですが、簿記の処理を行う上ではどうでもいいことなので、無視してOKです。
手形金額

そのまま、支払手形の金額です。
- 1行目の支払手形は500円
- 2行目の支払手形は900円
です。
てん末

受取手形記入帳と同様、てん末の欄は、最後どうなったのか?を意味します。
1行目の支払手形は、てん末の欄に、
『5月9日支払』
と書いてあります。
ということは、この手形は5月9日に既に支払いがされたということです。
一方で、2行目の支払手形のてん末欄は空欄になっています。
空欄ということは、まだ結末を迎えていないことを意味します。
つまり、2行目の支払手形はまだ支払いをしていないということです。
2行目の支払手形の満期日は6月5日ですから、今現在はまだ6月5日より前なのでしょう。
以上、全ての欄について説明しました。
説明した通り、【見なくてもいい欄】が結構あります。
その欄に×を付けると次のようになります。

こうすると、見るべきポイントは意外に少ないことが分かりますね。
これらのことを踏まえ、各日付に行うべき仕訳を考えます。
【2月9日】

2月9日は1行目の支払手形が発生した日です。
摘要には「仕入」と書いてあるので、仕入によって支払手形が発生したことが分かります。
そして金額は500円です。
よって仕訳は、

となります。
【3月5日】

3月5日は2行目の支払手形が発生した日です。
摘要には「買掛金」と書いてあるので、買掛金を手形によって支払ったことが分かります。
そして金額は900円です。
よって仕訳は、

となります。
【5月9日】

5月9日は1行目の支払手形を決済した日です。
問題文より、手形代金は当座預金で支払われたことが分かりますので、仕訳は次のようになります。

ということで、受取手形記入帳、支払手形記入帳について、かなり細かく解説しましたがいかがだったでしょうか?
受取手形記入帳、支払手形記入帳は、欄が多い割には情報量はそれほど多くありませんし、問われる仕訳も非常に単純なものばかりです。
楽に点数を取れる問題なので確実に解けるようにしておいてください。
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