仕入諸掛りと付随費用の仕訳をわかりやすく解説

期中処理

まず、『仕入諸掛り』と『付随費用』は同じようなものだと理解してください。

どちらも、ものを買ったときにかかる送料とか手数料や、引取運賃とか引取費用などのことです。

要するに、何かを買うときにかかってしまう小さな金額は全て該当すると思ってください。

で、『仕入諸掛り』と『付随費用』の違いとしては、『仕入諸掛り』は商品を仕入れる時にかかるもので、『付随費用』は土地・建物・備品・車両などを買うときにかかるもの、ということです。

つまり、何を買うときにかかるのかによって呼び方が変わるだけです。

  • 商品仕入のときにかかった場合 ⇒ 『仕入諸掛り』と呼ぶ
  • 土地・建物・備品・車両を買うときにかかった場合 ⇒ 『付随費用』と呼ぶ

基本的にはそれだけの違いなので、『仕入諸掛り』と『付随費用』は同じようなものだと思っていいです。

ただし、『付随費用』の場合は、買うときにかかった金額だけではなく、使える状態にするためにかかった金額も含まれます。

例としては、備品の設置費用とか、土地の整地費用ですね。

まぁ詳しくはこの記事で説明しますからね。

ちなみに、今回の記事の内容とはズレますが、土地・建物・備品・車両などのことを有形固定資産といいますので、覚えておいてください。

いちいち、土地・建物・備品・車両と書くと長ったらしくて読みにくいと思うので、この記事では以後、有形固定資産という言葉を使って説明します。

有形固定資産=土地・建物・備品・車両などのこと

無理のない範囲でいいので、こういった用語をちょっとずつ覚えていくと、簿記全般に対してのレベルがいつの間にか上がっていますからね。

今回の記事の内容はYouTube動画でも説明していますので、動画の方が理解しやすい方は次の動画を見てください。

それでは、今回の内容を説明していきます。

仕入諸掛り

『仕入諸掛り』って具体的にどんなもの?

『仕入諸掛り』は、実務では色々なものがあると思うのですが、日商簿記3級の場合、まずは引取費用だけ覚えておけばいいと思います。

引取費用は『引取運賃』と書かれることもありますが、どちらも同じだと思っていて問題ありません。

まぁ、引取費用以外を挙げると、

  • 送料
  • 梱包代
  • 商品にかける保険料

とかがあります。

ですが、こんなものを丸暗記する必要はありません。

要するに、商品を仕入れるにあたって発生する小さな金額は全て仕入諸掛りに含まれると覚えておけばいいです。

まぁ、とりあえずは引取費用だけ覚えておけば、ほぼほぼ問題ない気がします。

当社負担の場合と相手負担の場合がある

実は『仕入諸掛り』を払うケースには当社負担の場合相手負担の場合の2パターンあります。

当社負担の場合というのは特に難しく考える必要はないですね。

『当社が負担すべきものを当社が払った』という、当たり前すぎるぐらい当たり前のことです。

じゃあ、相手負担の場合とはどういうことなのかというと、

これは、『相手が負担すべきものを当社が一旦払った』ということなのです。

なので、このケースの場合は当然、あとで返してもらえますからね。

なお、特に指示が無いときは当社負担だと判断してください。

では、当社負担の場合相手負担の場合の2パターンをそれぞれ見ていきます。

当社負担の場合の仕訳

仕訳の具体例

これから具体的な問題を見ていきますが、結論として、仕入諸掛りは「仕入」に含めて仕訳してください。

つまり、例えば商品の値段自体が1,000円で、引取費用が100円かかったら、借方に計上する「仕入」の金額は1,100円ということです。

【問題1】
商品80円を仕入れ、代金は掛けとした。なお、引取費用10円を現金で支払った。

どんな仕訳になるか、考えてみて下さい。

では、下に答えを表示します。

ポイントは仕入が90円になることですね。

それさえ分かればあとは簡単です。

貸方は、商品の金額80円だけが買掛金で、10円は現金で支払っています。

80円は仕入先へ支払うべき金額で、10円は運送屋に支払うというようなイメージです。

『仕入諸掛り』を「仕入」に含めて仕訳する意味合い

念のため、『仕入諸掛り』を「仕入」に含めて仕訳をする理由というか、その意味合いについて説明します。

例えば、あなたがネット通販で何か物を買ったとします。

物は何でもいいのですが、たとえば服としましょう。

5,000円の服を買いました。

で、服の値段自体は5,000円なのですが、送料が300円かかりました。

よって、あなたがその服を手に入れるためにかかった金額は5,300円ということになります。

じゃあ、もしあなたがその服を誰かに売るとしたら、最低でもいくらで売りたいですか?

いくらで売れば儲けが出ますか?

これは、最低でも5,300円で売らないと損をしてしまいますね。

儲けを出したいなら5,300円より高く売らないといけません。

服の値段自体は5,000円ですが、だからといって、例えば5,200円で売ったらどうなりますか?

200円の儲けが出ますか?

出ませんよね。

送料が300円かかっているので、それも含めて5,300円が原価と考えるはずです。

なので5,200円で売ったら、100円損してしまいます。

ですから、仕入れたときに「仕入」と計上する金額には、『仕入諸掛り』を含める必要があるのです。

「仕入」という勘定科目は、最終的には原価を表すわけですからね。

相手負担の場合の仕訳

次に、相手負担の場合の仕訳について説明します。

これは、『相手が負担すべきものを当社が一旦払った』ということなので、『仕入諸掛り』の金額は、あとで返してもらえます。

仕訳の方法としては、「立替金」を使う場合と、「買掛金」と相殺する場合の2つのやり方があります。

「立替金」を使う場合の仕訳

【問題2】
商品80円を仕入れ、代金は掛けとした。なお、先方負担の引取費用10円を現金で支払った。引取費用10円立替金勘定を使用して処理する。

では、下に答えを表示します。

当社負担の場合とは違って、仕入は80円です。90円にはなりません。

現金で払った10円は、相手負担のものを一旦払ったに過ぎないので、仕入には含めずに立替金(資産)とします。

「立替金」は、あとで返してもらえるお金という意味の資産です。

「買掛金」と相殺する場合の仕訳

【問題3】
商品80円を仕入れ、代金は掛けとした。なお、先方負担の引取費用10円を現金で支払った。引取費用10円は買掛金と相殺する。

では、下に答えを表示します。

商品の値段80円なので、本来なら買掛金はそのまま80円なのですが、相手負担の10円を当社が一旦払ってあげているので、相殺して70円の買掛金にすればいいよね、ということです。

なお、今回の問題では『引取費用10円は買掛金と相殺する』という明確な指示があるからいいのですが、何も指示が無い場合で、かつ勘定科目の選択肢の中に「立替金」が無い場合は、このやり方で仕訳してください。
(そうするしかありませんから。)

付随費用

『付随費用』って具体的にどんなもの?

『付随費用』も色々あり、どの有形固定資産を買うかによって、発生するものは変わります。

『付随費用』は、大きく分けて

  • 有形固定資産を買うときにかかる金額
  • 有形固定資産を使える状態にするためにかかる金額

の2つと覚えておけばいいです。

具体例を挙げると以下のようなものです。

  • 土地 ⇒ 仲介手数料・登記料・整地費用、不動産取得税、登録免許税
  • 建物 ⇒ 仲介手数料・登記料・改装費用、不動産取得税、登録免許税
  • 備品 ⇒ 引取費用・設置費用
  • 車両 ⇒ 〇〇手数料、自動車取得税

まぁ、これも丸暗記は必要ないですね。

  • 買うときにかかる金額
  • 使える状態にするためにかかる金額

の2つは『付随費用』に含まれる、という覚え方で問題ありません。

そして『付随費用』は、有形固定資産を買ったときの仕訳において、原則としてその資産の金額に含めることになります。

例外として、

  • 不動産取得税
  • 自動車取得税
  • 登録免許税

などの税金系は、その資産には含めずに、「租税公課」とすることもできます。

まぁでも、日商簿記3級でそこまで細かく問われることはないと思うので、やはり

  • 買うときにかかる金額
  • 使える状態にするためにかかる金額

の2つは付随費用としてその資産に含める、という覚え方でいいでしょう。

『付随費用』は当社負担の場合のみ

『仕入諸掛り』との違いとして、『付随費用』の場合は、当社負担の場合しかありません。

相手負担の付随費用はありません。

もしかしたら実務上は相手負担の付随費用というのが存在するのかもしれませんが、簿記の問題では僕は見たことがありません。

なので、『付随費用』を払ったときは、必ず当社負担だと思っていいです。

『付随費用』の仕訳

お待たせしました、それでは仕訳の具体例です。

【問題4】
備品80円を仕入れ、代金は月末に支払うこととした。なお、備品の設置費用10円を現金で支払った。

どんな仕訳になるか、考えてみて下さい。

では、下に答えを表示します。

設置費用の10円は付随費用として「備品」に含めて処理をしますので、「備品」は90円になります。

ではもうひとつ具体例いきましょう。

【問題5】
土地100円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。なお、仲介手数料10円を現金で支払った。

じゃあこれも、どんな仕訳になるか考えてみて下さい。

では、解答を下に表示します。

仲介手数料10円は付随費用として「土地」に含めますので、「土地」は110円になります。

『付随費用』を有形固定資産に含めて仕訳をする意味合い

念のため、『付随費用』を有形固定資産に含めて仕訳をする理由というか、その意味合いについて説明します。

まぁこれは、『仕入諸掛り』を「仕入」に含めて仕訳をする理由と同じような感じです。

あなたが通販で100,000円のパソコン(備品)を買って、送料が5,000円かかったとします。

その場合、あなたにとってそのパソコンの価値はいくらになるのかというと、105,000円ですよね。

パソコンの値段自体は100,000円ですが、送料(付随費用)が5,000円かかっているので、合計の105,000円がそのパソコンの価値だと考えるはずです。

もしそのパソコンを盗まれたら、いくら損したと思うのか?

と考えれば分かりやすいです。

そのパソコンの価値は105,000円だということが感覚的に分かるはずです。

ですから、付随費用は有形固定資産に含めて借方に仕訳してください。


ということで、今回の内容は以上となります。

そんなに難しい内容ではありませんので、仕入諸掛りや付随費用の問題が出題されたら一瞬で解けるように完璧に覚えておくことが重要です。

【一瞬で解ける】という状態にしておくことで、本試験において大幅な時間短縮になりますからね。

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