簿記3級の伝票問題の中で多くの方が苦手とする内容として、一部現金取引があります。
一部現金取引は日商簿記3級の本試験で出題される可能性があるため、しっかりと理解しておきたい内容です。
この記事では、
- 一部現金取引とは
- 一部現金取引の2つの起票方法
について、具体例を出して分かりやすく解説します。
なお、伝票とは何かが分からない方は、以下の記事で伝票の基礎を解説しております。
伝票における一部現金取引とは?
一部現金取引とは、名前の通り、取引の一部が現金となっている取引です。
この説明だけだと意味不明だと思いますので、例題を出して説明します。
【例題1】
商品250円を仕入れ、代金のうち100円は現金で支払い、残額は掛けとした。
この取引は、仕入金額250円のうち、
- 100円が現金払い
- 150円が掛け
となっています。
このような取引が一部現金取引です。
あるいは、次のような取引も一部現金取引です。
【例題2】
商品380円を売り上げ、代金のうち120円は現金で受け取り、残額は掛けとした。
この取引は、売上金額380円のうち、
- 120円を現金で受け取り
- 260円が掛け
となっています。
このような取引も一部現金取引です。
一部現金取引には2つの起票方法がある
今例題に挙げたような取引は、そのままでは伝票に起票することができません。
なぜなら、伝票というのは、1枚につき1行の仕訳しか書けないからです。
先ほどの例題の仕訳は、借方または貸方が2行なので、その内容をそのまま1枚の伝票に起票することはできないということになります。
では、こういった場合どうするのかと言うと、2枚の伝票に起票します。
1つの取引を2つの仕訳に分けて考えるわけです。
で、その分け方には、
- 取引を分解する方法
- 取引を擬制する方法
の2つの方法があります。
取引を分解(分割)する方法
一つ目は、取引を分解する方法です。
『取引を分解する』とは、言葉の通り、1つの取引を2つ以上に分けて考えるということです。
【2つ以上】と言いましたが、大抵の問題は【2つ】です。
3つとか4つに分けるような問題が日商簿記3級で出題されることはまず無いと思って良いでしょう。
なおこの方法は、一般的なテキストでも、
- 分解する方法
- 分割する方法
などの言い回しで呼ばれていることが多いです。
では、先ほど行った例題を使って解説します。
【例題1】
商品250円を仕入れ、代金のうち100円は現金で支払い、残額は掛けとした。
この取引を、これから取引を分解する方法で考えていきますが、その前に、まずは普通に仕訳をしてみます。
ということで、仕訳はこのようになるわけですが、この仕訳の借方を2つに分けて考えます。
つまり、借方の「仕入」250を、100と150に分けるということです。
その結果を仕訳で表すと、次のようになります。
そしてこの仕訳をそのまま伝票に起票するわけです。
- 1行目の仕訳 ⇒ 出金伝票
- 2行目の仕訳 ⇒ 振替伝票
上記の通り、
- 出金伝票1枚
- 振替伝票1枚
の起票となります。
よって、起票される伝票は次の通りです。
では、もう一つ例題を見ていきます。
【例題2】
商品380円を売り上げ、代金のうち120円は現金で受け取り、残額は掛けとした。
この取引をこれから取引を分解する方法で考えていきますが、その前に、今回もまずは普通に仕訳をしてみます。
ということで、仕訳はこのようになるわけですが、この仕訳の貸方を2つに分けて考えます。
つまり、貸方の「売上」380を、120と260に分けるということです。
その結果を仕訳で表すと、次のようになります。
この仕訳をそのまま伝票に起票するわけです。
- 1行目の仕訳 ⇒ 入金伝票
- 2行目の仕訳 ⇒ 振替伝票
上記の通り、
- 入金伝票1枚
- 振替伝票1枚
の起票となります。
よって、起票される伝票は次の通りです。
取引を擬制する方法
次に、取引を擬制する方法を見ていきます。
『擬制』という言葉は、
本当はそうではないが、そのように見せかける
というような意味です。
伝票の一部現金取引で使われている『擬制』も、それと同じような意味です。
具体的には、
- 仕入と売上は、一旦全て掛けで取引をしたことにする
- その後、掛代金の一部を現金で決済したことにする
という方法です。
なおこの方法は、一般的なテキストでは、
- 取引を擬制する方法
- 2つの取引が同時にあったと仮定する方法
などの言い回しで呼ばれていることが多いです。
ただ、僕が個人的に分かりやすいと思っている呼び方は、
でっち上げ
です。
『取引を擬制する方法』とは早い話、取引をでっち上げる方法なのです。
仕入と売上は、あたかも一旦全部掛けで取引をしたかのようにみなして伝票に起票するわけなので、
でっち上げということです。
なので、以降この記事では『擬制』などという小難しい言葉は使わずに、『でっち上げ』という言葉で解説します。
ちなみに、『でっち上げ』という呼び方は、僕が勝手に名付けただけなので、恐らく僕以外でそう呼んでる人はいませんからね。
では、先ほど行った例題を使って解説します。
【例題1】
商品250円を仕入れ、代金のうち100円は現金で支払い、残額は掛けとした。
この取引を、これからでっち上げによって考えていきますが、その前に、まずは普通に仕訳をしてみます。
ということで、仕訳はこのようになるわけですが、この仕訳を、
- 一旦250円全部を掛けで仕入れ、
- その後すぐに掛代金のうち100円を現金で支払った
とみなして仕訳をしてみます。
それを仕訳で表すと、次のようになります。
- 一旦250円全部を掛けで仕入れ、
- その後すぐに掛代金のうち100円を現金で支払った
とみなして行った仕訳です。
このような仕訳で考えても結果は変わりません。
「買掛金」を相殺すれば元の仕訳と同じだからです。
ということで、改めて相殺前の仕訳を表示します。
そして、この仕訳をそのまま伝票に起票するわけです。
- 1行目の仕訳 ⇒ 振替伝票
- 2行目の仕訳 ⇒ 出金伝票
上記の通り、
- 振替伝票1枚
- 出金伝票1枚
の起票となります。
よって、起票される伝票は次の通りです。
本来の取引で言えば、買掛金250円なんてやっていません。
現実としては、掛けにしているのは150円だけですから。
あたかも、
- 一旦250円全額を掛けにして、
- その後、即座に100円を現金で支払った
かのように捉えて伝票に起票するということです。
言ってみれば、この起票方法は真実とは違うわけです。
架空の取引をでっち上げているわけですから、僕は『でっち上げ』と呼んでいます。
では、もう一つの例題を見ていきます。
【例題2】
商品380円を売り上げ、代金のうち120円は現金で受け取り、残額は掛けとした。
この取引をこれからでっち上げによって考えていきますが、その前に、まずは普通に仕訳をしてみます。
ということで、仕訳はこのようになるわけですが、この仕訳を、
- 一旦380円全部を掛けで売り上げ、
- その後すぐに掛代金のうち120円を現金で受け取った
とみなして仕訳をしてみます。
その結果を仕訳で表すと、次のようになります。
- 一旦380円全部を掛けで売り上げ、
- その後すぐに掛代金のうち120円を現金で受け取った
とみなして行った仕訳です。
このような仕訳で考えても結果は変わりません。
「売掛金」を相殺すれば元の仕訳と同じだからです。
ということで、改めて相殺前の仕訳を表示します。
この仕訳をそのまま伝票に起票するわけです。
- 1行目の仕訳 ⇒ 振替伝票
- 2行目の仕訳 ⇒ 入金伝票
上記の通り、
- 振替伝票1枚
- 入金伝票1枚
の起票となります。
よって、起票される伝票は次の通りです。
本来の取引で言えば、売掛金380円なんてやっていません。
現実としては、掛けにしているのは260円だけですから。
あたかも、
- 一旦380円全額を掛けにして、
- その後、即座に120円を現金で受け取った
かのように捉えて伝票に起票するということです。
ということで、今回は、伝票の一部現金取引について、
- 取引を分解する方法
- 取引を擬制する方法(でっち上げ)
の両方の起票方法を説明しましたが、いかがだったでしょうか。
一度読んだだけではなかなか記憶に定着しないと思いますので、今回の記事を繰り返し読むことをおすすめします。
また、こちらの記事では今回の内容について本試験レベルの問題を解説していますので、良かったら読んでみてください。
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