当座借越とは?意味と仕訳をわかりやすく解説(簿記3級)

決算関連

この記事では、「当座借越」について解説します。

  • 期中仕訳
  • 決算整理仕訳
  • 再振替仕訳

の全てについてわかりやすく説明しますので、必ず最後まで読んでください。

特に再振替仕訳については、

「なぜ再振替仕訳を行うのか?」

という疑問を持つ方が非常に多いので、しっかりと説明します。

当座借越とは?

「当座借越」とは、当座預金をマイナスまで使い込んだ場合の負債を意味する勘定科目です。

当座預金というのは特殊な口座で、契約をしていれば、預金残高を越えた額の支払いができます。

この契約を当座借越契約といいますが、当座借越契約をしていれば、マイナスの残高まで使い込むことができるのです。

普通預金の場合はそんなことできないですよね。

普通預金は、今持っている残高までしか支払いをすることができません。

10万円の残高の場合は10万円までしか支払い(引き落とし)はできないし、

20万円の残高だったら20万円までしか支払い(引き落とし)はできません。

まぁ、当然っちゃ当然ですね。

ですが、当座預金の場合は、当座借越契約を結んでいれば、マイナスまで使い込むことができるのです。

例として具体的な金額を上げますと、
たとえば、当座預金の残高が10万円しかない場合でも、13万円の支払いができたりします。

ちなみに今の例で言うと、当座預金勘定は貸方残高が3万円という結果になります。

つまり、マイナス3万円です。

この3万円は銀行からの借金を意味し、決算において、「当座借越」という負債の勘定科目で処理をしていくことになります。
(詳しくは実際の仕訳で解説します)

なお、いくらまでマイナスにできるかは、銀行との契約によって決まりますが、簿記では必ず問題で与えられます。

マイナスにできるリミットの金額を、借越限度額といいます。

当座借越の具体的な仕訳問題

では、「当座借越」の実際の仕訳問題を見ていきます。

当座借越の期中仕訳

まずは期中仕訳を見ていきます。

結論から言うと、期中では「当座借越」の処理はしません

当座預金の残高がマイナスになっても、期中ではそのままにしておきます。

【問題1】
買掛金80円を小切手を振り出して支払った。なお、当座預金の残高は60円であったが、当社は銀行と当座借越契約を結んでおり、借越限度額は300円である。

まずは解答を表示します。

当座預金の残高が60円しか無い状況で、80円の小切手を振り出したので、これにより当座預金の残高はマイナス20円になりました

※60円-80円=-20円

ご覧の通り「当座預金」T勘定は、貸方残高になっています。

でも、だからといって特に変わったことをする必要はありません。

マイナス(貸方残高)になったことは気にせず、普通に仕訳をするだけでいいです。

期中の段階では、マイナス(貸方残高)になっていようが、そのまま放置しておきます。

なお、借越限度額は300円なので、まだまだ余裕がありますね。

まぁ実際問題、借越限度額をオーバーすることはあり得ませんので、借越限度額を神経質に気にする必要は全くありません。

当座借越の決算整理仕訳

続いて決算整理仕訳です。

先ほどの続きの問題になります。

【問題2】
本日決算のため、当座預金勘定の貸方残高20円を当座借越勘定に振り替えた。

まずは解答を表示します。

決算において「当座預金」がマイナス(貸方残高)になっていたら、その金額の分だけ「当座預金」を借方に計上し残高をゼロにします

そして貸方に「当座借越(負債)」を計上するということです。

つまりこれは、貸方にある20円の金額を、

当座預金 ⇒ 当座借越

とチェンジしていると捉えることができます。

期中であれば、「当座預金」がマイナス(貸方残高)になっていても放置でいいのですが、決算では、「当座預金」のマイナスは「当座借越」に振り替えないといけません

なぜなら、資産であるはずの「当座預金」がマイナス(貸方残高)というのは、本来は不自然なことだからです。

決算というのは1年の終わりですから、金額を確定させ貸借対照表の作成などもしていきます。

「当座預金」が貸方残高ということは、貸借対照表において「当座預金」が右側(貸方側)に位置するということです。

その貸借対照表を見た人はどう思うでしょうか?

『あれ?当座預金(資産)が貸方に存在するってどういうこと?』

と混乱してしまうと思います。

もちろん、簿記の知識がある人なら、「当座預金」が右側(貸方側)に存在するのを見たとしても、

『あぁ、なるほど、当座借越ってことね』

と納得するでしょうが、貸借対照表は簿記の知識が無い人も見るわけですからね。

マイナス(貸方残高)になっているのなら、「当座預金(資産)」ではなく「当座借越(負債)」という科目にチェンジしないと意味が伝わりづらくなります。

「当座借越」であれば、負債なので、貸方に存在するのが当たり前ですからね。

当座借越の再振替仕訳(なぜ行う?)

最後に再振替仕訳です。

再振替仕訳とは、前期の決算整理で行った仕訳の逆の仕訳をいいます。

前期決算で行った決算整理仕訳の逆仕訳を行い、期中の状態に戻してあげます。

【問題3】
期首において、前期決算で計上した当座借越20円の再振替仕訳を行う。

解答を表示します。

決算を終え次の会計期間を迎えたら、また元の状態に戻すために、「当座借越」を消し、「当座預金」のマイナスを復活させます

この仕訳を再振替仕訳といいます。

なぜ再振替仕訳を行うのかというと、決算整理仕訳を行う前の状態に戻すためです。

前期の決算整理仕訳により、マイナス(貸方残高)だった「当座預金」がゼロになり、代わりに「当座借越」が発生しましたが、あの処理はあくまでも貸借対照表の見栄えのためです。

資産であるはずの「当座預金」が貸借対照表の貸方に位置していたら不自然なので、「当座借越」という負債の科目にチェンジしたわけです。

だから、決算が終わって翌期首になったら、再振替仕訳を行って元に戻してあげるのです。

で、そのあとは普通に期中の取引を仕訳していくことになります。

期中のうちは、たとえマイナス(貸方残高)であったとしても「当座預金」という勘定科目のみで当座預金の増減を仕訳していくのです。

そして、また決算になったときに「当座預金」がマイナス(貸方残高)であれば、そのときはまた「当座借越」に振り替えていくことになります。

当座借越の一連の練習問題

では、最後に練習問題をやってみましょう。

一連の取引になっているので、それを意識して解いてみてください。

【1】当座預金口座を開設し、現金300円を当座預金口座に預け入れた。なお、借越限度額1,000円の当座借越契約も結んだ。

【2】商品120円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。

【3】水道光熱費90円が当座預金から引き落とされた。

【4】買掛金160円を小切手を振り出して支払った。

【5】決算を迎えたため、当座預金勘定の貸方残高を当座借越勘定に振り替えた。なお、上記以外に当座預金に関する取引は存在しない。

ではまずは解答を一気に全て表示し、その後解説したいと思います。

解答を見たい方は下に進んでください。

【1】当座預金口座を開設し、現金300円を当座預金口座に預け入れた。なお、借越限度額1,000円の当座借越契約も結んだ。

【2】商品120円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。

【3】水道光熱費90円が当座預金から引き落とされた。

【4】買掛金160円を小切手を振り出して支払った。

【5】決算を迎えたため、当座預金勘定の貸方残高を当座借越勘定に振り替えた。なお、上記以外に当座預金に関する取引は存在しない。

では一つ一つ解説します。

【1】当座預金口座を開設し、現金300円を当座預金口座に預け入れた。なお、借越限度額1,000円の当座借越契約も結んだ。

これは特に難しいことは何もありません。

現金を当座預金に預けただけです。

ただ、『当座借越契約を結んだ』という文章があることから、このあとほぼ間違いなく当座預金はマイナス(貸方残高)になるということを意識したほうがいいでしょう。

でなきゃ、『当座借越契約』情報を与える意味はありませんからね。

まぁでも、絶対ではないです。

わざと『当座借越契約』という情報を与え、このあとの取引で当座預金がマイナスになると受験者に思わせておいて、でもそうならない、という引っかけの可能性もゼロではないです。

ただ、日商簿記の3級でそんな高度な引っかけはあまり考えられないと思います。

1級とかだったら普通にあり得ますけどね。

参考までにこの時点での当座預金のT勘定を示しておきます。

【2】商品120円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。

仕訳自体の解説は不要だと思いますが、当座預金の残高の推移には常に注意を払っておいてください。

参考までにこの時点での当座預金のT勘定を示しておきます。

【3】水道光熱費90円が当座預金から引き落とされた。

これも仕訳に関しては全く難しくありませんが、当座預金の残高は追いかけておいてください。

当座預金勘定は、まだプラス(借方残高)を保っています。

参考までにこの時点での当座預金のT勘定を示しておきます。

【4】買掛金160円を小切手を振り出して支払った。

この取引によって、当座預金がとうとうマイナス(貸方残高)になってしまいました。

ただ、今はまだ期中なので、マイナスになったからといって別にやることはありません

参考までにこの時点での当座預金のT勘定を示しておきます。

【5】決算を迎えたため、当座預金勘定の貸方残高を当座借越勘定に振り替えた。なお、上記以外に当座預金に関する取引は存在しない。

上記の【1】~【4】の取引の結果、当座預金は貸方残高70円です。

その金額を「当座借越」に振り替えるということになります。

参考までに、【5】を終えたあとの当座預金のT勘定を示しておきます。

これで練習問題も以上になります。


とういうことで、今回は当座借越について説明しました。

決算整理仕訳としては簡単な部類なので、本試験で出たら確実に取りたいところです。

必ずマスターおきましょう。

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