小口現金の意味合いと仕訳を分かりやすく解説(簿記3級)

期中処理

今回は、日商簿記3級の本試験でそこそこ出題実績のある「小口現金」について説明します。

それほど難しい内容ではありませんが、細かい論点などが若干あり、不意に出題されると意外に解けないこともありますので、この記事を読んでマスターしてもらえたらと思います。

小口現金とは?仕組みと役割

まずは、『小口現金とは何なのか?』を説明します。

小口現金の仕組み(定額資金前渡法)

「小口現金」は資産の勘定科目で、イメージとしては、小さな金庫に入っているお金という感じです。

会社では、日々の少額の支払いに備えて、通常の「現金」とは別に、お金を分けて管理することがあります。

このお金を「小口現金」といいます。

「現金」も「小口現金」も、お金という意味では同じです。

大きな金庫に入っている多額のお金が「現金」だとしたら、小さな金庫に入っている少額のお金が「小口現金」というようなイメージです。

なお、大きな金庫を管理している人を会計係といいます。

会計係経理担当者

です。

それに対し、小さな金庫を管理している人を小口係または用度係といいます。

仕組みとしては、会計係小口にいくらかのお金をあらかじめ渡しておきます。

いくら渡すのかは当然会社によって違いますが、実務においては、僕の経験では5万円~20万円くらいです。

で、

  • 電車代として使う
  • 文房具を買う
  • 郵便切手を買う

のような日々の小さな支払いについては「小口現金」から行われます。

そして週末になったら、小口係会計係使った金額と内容】を報告し、その報告を受けて会計係は仕訳をするわけです。

その後、会計係は減った分の小口現金を補給します。

つまり、会計係小口係に、一週間で減った分のお金を渡して、「小口現金」を元の金額に戻してあげるということです

このサイクルを一週間ごとに繰り返すのが小口現金の制度です。

(一ヵ月ごとの場合もありますが、ほとんどの簿記の問題は一週間ごとです。)

これにより「小口現金」は、5万円なら5万円、10万円なら10万円という風に、毎週常に一定の金額でスタートすることができます。

このシステムのことを定額資金前渡法とかインプレスト・システムとかって言います。

これらの用語は簿記の問題文で登場しますので、全く知らないのは良くないですが、かと言ってキッチリ覚える必要もありません。

なんとなく認識しておくぐらいで充分です。

なお、小口現金の補給のタイミングは週末か週明けのどちらかですが、どちらであっても考え方や処理方法は変わりません。

なぜ小口現金が必要なのか?

では、なぜ「現金」と「小口現金」に分けて管理するのか?

それは、日々の小さな買い物や支払いの度に、いちいち大きな金庫からお金を出すのは面倒だし、リスクもあるからです。

「現金」のほうは、何百万円とか何千万円とかっていう大金です。

それに対し「小口現金」は、数万円程度のお金です。

  • 電車代として使う
  • 文房具を買う
  • 郵便切手を買う

のような少額の支払いのためにわざわざ大金の入った金庫を開けるのは手間がかかるしリスクもあります。

会社にある大きな金庫は、パスワードや指紋認証によって、限られた人間しか開けることができないルールになっていることが多いですからね。

ちなみに、僕が以前経理をやっていた会社では、大きな金庫のパスワードを知っているのは僕含めて4人だけでした。

よって、「小口現金」というシステムを取る目的は、手間とリスクを減らすことになります。

仕訳は会計係の立場から行う

会社において「現金」と「小口現金」に分けて管理するので、簿記上においても「現金」と「小口現金」で勘定科目を分けて取り扱います。

そして重要なことは、簿記の処理(仕訳)は、必ず会計係の立場から行うということです。

重要なことなのでもう一度言います。

仕訳は会計係の立場から行ってください

つまり、仕訳をするタイミングとしては、

  • 小口係が会計係に報告をした時
  • 会計係が小口係にお金を渡したとき(補給したとき)

の2つのタイミングだけです。

よって、小口係がお金を使ったときには仕訳はしません

というより、できません。

なぜなら、小口係がお金を使っただけでは、会計係はその事実を知り得ないからです。

会計係としては、小口係から報告をもらって初めて、「小口現金」の減少の事実を知るわけですからね。

報告や補給が行われるのは週末週明けなので、そのどちらかのタイミングにしか仕訳はしないということになります。

よって、基本的には週の途中に仕訳をすることはありません。

小口現金の具体的な仕訳

では、「小口現金」の具体的な仕訳問題を見ていきます。

通常のパターン

【問題1】
12月1日、小口現金制度を開始し、会計係は小口現金500円を小口係に現金で渡した。
インプレスト・システムを採用している。

まずは答えを表示します。

仕訳は必ず会計係の立場から行います。

「現金」を減らし、その代わりに「小口現金」を増加させてください。

念のため、この時点での「小口現金」のT勘定を示しておきます。

【問題2】
12月3日、小口係は郵便切手代160円、電車代90円、コピー用紙代130円を小口現金で支払った。

答えを表示します。

小口係が支払いをしただけなので、仕訳はありません。

なぜならこの時点では、小口係が支払いをした事実を会計係は知らないからです。

仕訳は必ず会計係の立場から行う

このことは絶対に忘れないでください。

【問題3】
12月7日、小口係は会計係に次のような支払いの報告をした。

通信費160円、旅費交通費90円、消耗品費130円

答えを表示します。

会計係はこのタイミングで初めて、「小口現金」から支払われた事実と、その内容を知ることになります。

よって、それぞれの費用を計上し、「小口現金」を減少させる仕訳をするわけです。

念のため、この時点での「小口現金」のT勘定を示しておきます。

【問題4】
12月8日、会計係は小口係に対し、現金380円を渡して小口現金を補給した。

答えを表示します。

使った分のお金を補給し、小口現金を元の金額(500円)に戻してあげます。

これを毎週繰り返すのが小口現金のシステムです。

念のため、この時点での「小口現金」のT勘定を示しておきます。

報告と補給が同時に行われるパターン

では次に、報告と補給が同時に行われる仕訳を見ていきます。

途中までは通常のパターンと変わりません。

【問題5】
12月1日、小口現金制度を開始し、会計係は小口現金500円を小口係に現金で渡した。
インプレスト・システムを採用している。

答えを表示します。

解答は【問題1】と同じです。

【問題5】
12月3日、小口係は郵便切手代160円、電車代90円、コピー用紙代130円を小口現金で支払った。

答えを表示します。

解答は【問題2】と同じです。

さて、難しいのは次です。

【問題6】
12月7日、小口係は会計係に次のような支払いの報告をした。

通信費160円、旅費交通費90円、消耗品費130円
それを受けて、会計係は直ちに現金を小口係に渡し、小口現金を補給した。

まずは答えを表示します。

問題文の通り、小口係から報告を受けた会計係は、即行で現金を小口係に渡し、小口現金を補給をしています

このような場合は、仕訳において「小口現金」を登場させる必要はありません

「小口現金」は一切処理をする必要が無いのです。

報告補給が同時に行われていますので、考え方としては、次の2つの仕訳を同時に行ったのと同じです。

この2つの仕訳の「小口現金」を相殺すると、解答の仕訳になります。

つまり、

  1. 報告時の処理として「小口現金」を減らす(貸方計上)
  2. 補給時の処理として「小口現金」を増やす(借方計上)

というように、減らして増やすをやっても無駄なので、だったら「小口現金」は何もしないほうが楽だよねということです。

どちらも同じ日に行われているわけなので、省略してしまおうということです。

結果、帳簿上の「小口現金」は元々の500円のまま動かないことになります。

これが、『報告と補給が同時に行われるパターン』です。

仕訳問題で結構見かけることがあるので、ぜひマスターしてください。


ということで、今回は小口現金について説明しました。

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