この記事では、簿記3級で登場する「差入保証金」という勘定科目について、その意味と仕訳を初心者にもわかりやすく解説します。
知ってさえいれば全く難しい内容ではありませんので、確実に覚えておきましょう。
差入保証金は資産の勘定科目
「差入保証金」とは、建物(部屋)を借りる時に支払った敷金や保証金を計上する資産の勘定科目です。
なぜ資産なのかというと、敷金や保証金というのは、部屋を出ていくときに満額が返ってくることが前提だからです。
(実際に満額が返金されるかどうかはともかくとして。)
例えば、僕ら個人も、マンションやアパートを借りる時に敷金を払うことがありますが、敷金は、基本的には退去時に返金される前提で支払います。
まぁ、壁に傷をつけてしまったとか、汚してしまったなどがあると、敷金を利用して修繕をされてしまうため、その場合は別ですが、でも、払った時点では、一応あとで返ってくると考えます。
会社が建物(部屋やオフィス)を借りる場所も同じです。
敷金や保証金を払った時点では、とりあえず、あとで満額が返金されると考え、資産として計上するのです。
で、そのとき使われる勘定科目を「差入保証金」といいます。
よって結論としては、
敷金・保証金を支払ったら、
⇒「差入保証金(資産)」
ということです。
このように意味を理解すると、なぜ「差入保証金」が資産なのかが分かると思います。
差入保証金の具体的な仕訳
では、具体的な仕訳を見ていきます。
差入保証金が満額返ってくる場合の仕訳
【問題1】
建物の賃借にあたり、敷金200円を普通預金から支払った。
解答は次のようになります。
敷金として払った200円を「差入保証金」として計上します。
この時点では、この200円は退去時に返金されると考えていますからね。
だから資産なのです。
【問題2】
建物の賃借契約が終了し、敷金200円を普通預金で受け取った。
解答は次の通りです。
契約終了時(退去時)には、「差入保証金」を全額貸方に計上して消滅させます。
そして、返ってきた満額の200円を「普通預金」の借方に計上すれば終了です。
差入保証金の一部が返ってくる場合の仕訳
【問題3】
建物の賃借にあたり、敷金200円を普通預金から支払った。
解答は次の通りです。
問題1と同じなので解説は必要無いでしょう。
【問題4】
建物の賃借契約が終了し、敷金200円から原状回復の費用60円を差し引かれた残額を普通預金で受け取った。
解答は次の通りです。
まずは「差入保証金」を200円全額、貸方に計上して消滅させてください。
次に、返金された金額について考えます。
敷金として払っていた200円のうち、60円は原状回復に使われてしまいました。
よって、差額の140円が返金されたということです。
※200円−60円=140円
つまり、原状回復の費用を当社が負担したことを意味しますので、140円が当社の費用として計上されます。
この費用を「修繕費」といいます。
なお、「修繕費」についてはこちらの記事で詳しく説明しているので参考にしてください。
差入保証金では足りず、さらにお金を取られた場合の仕訳
【問題5】
建物の賃借にあたり、敷金200円を普通預金から支払った。
解答は次のようになります。
問題1と同じなので解説は必要無いでしょう。
難しいのは次です。
【問題6】
建物の賃借契約が終了し、契約時に支払った敷金200円を超過した40円を原状回復の費用として普通預金で支払った。
解答は次のようになります。
「差入保証金」を全額貸方に計上して消滅させるのはこれまでと同じです。
また、問題の指示通り「普通預金」を貸方に40円計上します。
これで貸方の仕訳は終了です。
今回特に説明したいのは借方の「修繕費」です。
借方に「修繕費」が240円計上されています。
これはどういうことかと言うと、多額の修繕費がかかってしまい、最初に渡した敷金200円では足りなかったということです。
で、足りない分を40円払いました。
つまり、原状回復の費用としてトータルで240円もかかってしまったことを意味します。
全て当社が負担しています。
※200円+40円=240円
なので、「修繕費」という費用が240円計上されるわけです。
このケースはあまり見ることのない問題ですが、「差入保証金」と「修繕費」の意味合いをわかりやすくするために、一応説明しておきました。
差入保証金の仕訳問題でよくあるパターン
最後に、「差入保証金」のよくありがちな仕訳問題をやっていきます。
【問題7】
建物の賃借にあたり、敷金300円、不動産会社への仲介手数料150円、1ヵ月分の家賃150円を普通預金から支払った。
まずは解答を表示します。
パッと見は問題文が長くて難しく感じるかもしれませんが、冷静に一つ一つ片付けていけば、なんてことのない問題です。
- 敷金 ⇒ 差入保証金(資産)
- 仲介手数料 ⇒ 支払手数料(費用)
- 家賃 ⇒ 支払家賃(費用)
となりますので、この3つを全て借方に計上し、合計額を貸方に「普通預金」で計上すれば終わりです。
こういう問題は、問題の情報量がそこそこあり、解答すべき仕訳の行数も多めなので、問題文を見た瞬間は、
「うわっ!大変そう!」
って思いがちですが、冷静にやれば全く怖くない問題です。
まぁ、
- 敷金は「差入保証金」
- 仲介手数料は「支払手数料」
- 家賃は「支払家賃」
ということを知らなければ解けませんが、知ってさえいれば簡単に解けます。
この手の問題が本試験で出たときは、『落ち着いて一つ一つ処理をする』というマインドを強く持ってください。
ということで今回は「差入保証金」について解説しました。
仕訳のやり方だけでなく、「差入保証金」という勘定科目がなぜ資産なのかということを理解しておくと、記憶に残りやすくなりますからね。
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